季節の行事ときもの

2026/08/15

ゑり善の2階。振袖が陳列されています。

「わあっ可愛い!」
母善子(よしこ)、娘の椎香(しいか)とともにゑり善を訪れた京子(きょうこ)は、エレベーターを降りて目に飛び込んできた店の2階の景色に思わず声をあげた。
「8月はお嬢様の夏休みや帰省の機会に振袖を見に来られる方もいらっしゃいますので、振袖を中心に陳列させていただいております。この時期は七五三のお着物も含めて、節目のお祝いのお着物を豊富に取り揃えております。」
「素敵ねえ…しいちゃんが大きくなるのが待ち遠しいわあ。」
店員の説明に善子も呼応しながら陳列をうっとりと眺める。

今日は今年3歳になった椎香の七五三の着物を見るために訪れた。
数えの年齢でお詣りをするか昨年家族で話し合ったのだが、もう少し成長してからのほうが良いのではないかということになり、椎香は満年齢でお詣りをする予定である。
京子自身と妹の恵理子(えりこ)のときは三ツ詣りの着物を初着から仕立替えたと聞いていたので、椎香も同じようにしようかと思っていた。けれど着物好きの善子が「節目節目で違う着物を着るのも素敵じゃない。プレゼントさせて。」と言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。
七五三のお着物は畳のほうにご用意しております、という店員の案内に従って三人も畳に上がる。

 

ゑり善の2階畳側。七五三のお着物が陳列されています。

三つ詣り用のお仕立て前のお着物、三ツ身2点と反物2点

「三つ詣りのお着物は絵羽のものと反物がございます。椎香ちゃんのお好きな紫色のお着物は今回もおすすめできるものがなくて恐縮ですが、可愛らしいピンク色や、元気な印象を与えるオレンジや黄色系統のお着物も素敵だと思いますよ。」
そう言いながら店員は絵羽(縫い目でも柄が繋がり、仮仕立で着物の状態になっているもの)や反物を広げていく。
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2026/07/28

本格的な夏の到来です。皆様暑さに負けずお過ごしでしょうか。
肌を焼き付けてくるような日射し、少し外を歩いただけでもにじむ汗。今年から40度を越える日は「酷暑日」と名付けられ、夏の気温の高さをさらに実感いたします。
その影響で「夏は暑すぎて着物が着られない」というお声を耳にする機会も増えました。厳しい暑さを考えますと、そのお気持ちもよく分かります。

とはいえ、四季のある日本にはそのシーズンにしか楽しめないものがあるでしょう。
夏の着物もそのひとつだと思います。夏ものだけの透け感のある生地や、夏の植物など季節の限られたお柄…
前回のブログでも、恵理子さんは「夏の着物が着られる時期だから」と、着物を着るためにお出かけされていましたね。
着物は暑くて着られないけれど浴衣なら…という方もいらっしゃると思います。
ということで今回は浴衣と着物それぞれに、夏のお召し物の良さを考えてみたいと思います。

お先に申し上げておきたいのはTPO、つまり着ていく場面にふさわしいお召し物というものはあれど、優劣はないということです。どのようなものにも・ことにも・人にも一長一短存在するのと同じです。
浴衣だから良い、着物だから良いというよりは、ご自身のお好みやご用途に合った夏のお召し物の愉しみ方を見つけていただけましたら幸いです。

 

 

浴衣のおすすめポイント~
浴衣の一番の良さは、「気軽に着られる」というところでしょう。この言葉は着付け、価格、お手入れなど多角的な面から見ても当てはまります。
それぞれの視点からご紹介いたします。

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2026/07/08

絽の小紋(薄グレー地、幾何学模様)に夏のなごや帯(白地、雪輪)コーディネート小千谷縮の生地で水色無地、絽の帯上

とある年の7月16日。恵理子は朝早くから目を覚まし、部屋の空調を入れた。
着物を着るための第一歩である。

 

昨年母の善子、姉の京子とともに浴衣で歩いた祇園祭の街並み。今までも同じ景色のなかを歩いたことはあったものの、普段着ていなかった日本の伝統装束に身を包んでいるからか、初めて足を踏み入れた土地のような特別な感覚があった。
今年、姉の京子は今の家族で祇園祭を楽しむらしい。先月会ったときに主人の陽太さんと娘の椎香ちゃんに浴衣を誂えることになったと、反物を合わせているときの写真を嬉しそうに見せてくれた。
母の善子も遠方から旧友が来るらしく、京都の伝統的なお祭りを楽しんでもらおうと案内に張り切っていた。
一方恵理子はというと、シフト制の仕事でせっかく宵山の日にお休みが取れたというのに、ことごとくまわりと予定が合わなかった。人口密度高まり熱気のあふれる街に繰り出すよりも、ひとり優雅におうち時間を楽しむのも乙ではないかという考えもよぎったが、恵理子は着物が着たかった。

昨年の祇園祭の後、着つけを習い始めた恵理子。はじめは着物に帯に手順を覚えるのが大変で、着物を気軽に着るなど長い道のりになる予感がしていたが、慣れてしまえばこちらのものであった。すっかり着物にはまってしまって、趣味の美術館・博物館巡りをするとき、母の善子と一緒に出かけるときなど、隙あらば着物でのお出かけを楽しんでいる。
せっかく7月になったのだ。夏着物が着られる季節だ。昨年は着付けを習い始めたばかりだったから、まだ夏着物にを袖を通したことはない。自分の夏着物はまだ持っていないが母のがある。少々裄も身丈も短いが、腰ひもの位置を腰骨のあたりに下げればおはしょりの長さは出せるし、自分が楽しむために出かけるだけだから裄も多少短くたって気にしない。せっかくなら新たな季節の着物も楽しみたいではないか。そうなれば祇園祭限定の行きたいお店もある。

 

そう決心したのが2週間ほど前のことである。
着物を着たい!という気持ちは大きくても恵理子にも億劫になってしまうときだってある。
その気持ちがしぼんでしまわないように、着物を着る前日にはしわのばしの意味も兼ねて着物と長襦袢はきものハンガーに吊るしておくようにしている。帯、そのほか着付けに必要なものもその近くに準備しておくのが着物を着る前のルーティーンになっている。そして快適に着替えられるように朝起きたら一番に空調を入れる!というのを決心して恵理子は昨晩床についた。

そうして恵理子は決心通りに起き上がり、そのまま身支度を整えて今に至る。

絽の小紋(薄グレー地、幾何学模様)に夏のなごや帯(白地、雪輪)コーディネート小千谷縮の生地で水色無地、絽の帯上に田上惠美子さんの黒い帯留、水色の三分紐
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2026/05/20

前回のあらすじ
ゑり善のInstagramに投稿されていた女の子用の浴衣のコーディネートを見て、自身の娘 椎香の浴衣を検討し始めた京子。主人の陽太を説得し、今年の祇園祭で椎香の浴衣デビューが決定した。家族3人で見に行ったゑり善にて、陽太も図らずも好みの浴衣に巡り合った様子である。

 

女の子向け浴衣 それぞれ白地に犬、花、貝殻。カラフルな色合い。

陽太が男性用浴衣を見始めたとき、畳に移動した京子と椎香。店員が畳の上に反物を広げていくと、椎香の目はそちらに向いて動かなくなった。好奇心旺盛な椎香にはくるくると回る生地、それとともに現れる柄が新鮮に映ったのだろう。
「お子様用の浴衣はお顔映りというよりお好みによるところが大きいですね。お子様用ははっきりとしたお色目でパッと見てかわいい!というものが多いですよ。」
「どれもかわいい!確かに小さいころだから似合う色ってありますよね。しいちゃん、どれがいい?」
京子が椎香の肩を抱いて顔を覗き込みながら優しく話しかける。
「むらさき!」
椎香は柄に使われていた紫色の部分を元気よく指さす。彼女に一番近いところに置いてある貝殻柄の反物だ。
「今日のおようふくの色といっしょだね!むらさき好きなの?」
店員も椎香に元気に話しかける。
「うん!」
嬉しそうな椎香に京子の頬も緩み、店員へ補足のように話す。
「アイドルの…ええっとグループ名が思い出せませんが…その紫色の子に憧れているみたいなんです。」
「素敵ですね!浴衣をお召しになると特別感を感じていただける方も多いので、お嬢様もアイドルになれちゃいますね。」
「しいかもアイドルなれる?」
はしゃぎだす椎香である。
「アイドルの衣装には帯も必要ですよ~。残念ながら紫色はないのですが、しいかちゃん、どれがいい?」
店員が兵児帯を見せていく。
「むらさき!」
ない色を言う椎香を京子がなだめる。
「椎香、紫はないんだって。ピンクとかどう?これもかわいくない?」
反物の上にピンクの帯を乗せてみる。
「むらさき~」
と椎香も譲らないので、反物と帯を実際にあてて見てもらうことにした。

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2026/05/05

男もの浴衣コーディネート(紺地蟹柄の浴衣、水色の角帯、信玄バッグ)と女の子浴衣コーディネート(白地にパステル貝殻の綿コーマ、ピンクの兵児帯、お子様用下駄)

昼夜の寒暖差もやわらぎ、日が落ちた後も初夏の空気を感じるようになった4月下旬。
子どもを寝かしつけ、家事もひと段落した京子(きょうこ)はダイニングの椅子に腰をかける。
夫の仕事は4月まで繁忙期のため、この月の家事はほとんど京子がこなしている。3歳の娘、椎香(しいか)の通う幼稚園では先週から預かり保育が始まり、自身の勤める会社でも子どもが小学生に上がるまでは時短勤務が認められている。そうした制度のおかげで余裕が戻りつつあったが、自分時間がとれるのはたいてい夜になってからだ。京子は一息ついてテーブルに置いていたスマホを手に取る。届いていたメッセージに返信した後、何気なく開いたInstagramの投稿にふと目が留まった。
「あっ、ゑり善が浴衣の投稿してる!今年の浴衣も綺麗だなあ…」
そう呟きながら京子は昨年の夏に母善子(よしこ)、妹恵理子(えりこ)とともに出かけた祇園祭での様子を思い出す。
母の指南のもと、それぞれに浴衣を着て繰り出した祭囃子で賑わう街並み。帯結びに多少苦戦していたものの着崩れることなく過ごして成功体験を得た恵理子は、その後宣言通りに着付け教室に通い、きものライフを楽しんでいる。今年は夏着物に挑戦したいと言っていた。

ゑり善の投稿写真を最後までスクロールしたところで玄関のドアが開く音がした。
「ただいま。」
残業続きにより最近は子どもが寝静まってから帰宅することも多い夫、陽太(ようた)が帰宅する。
「おかえり。ご飯よそうね。いつも先食べちゃってごめんね。」
「いやいや、用意してくれてありがとう。もうすぐこの残業三昧の日々も終わると思うから、来月の家事は俺頑張るな。」

夫に夕食を出し軽くキッチンまわりを片付けた京子は、仕事で消費したエネルギーを吸い込むように食事をとる夫の向かいに腰かけた。
「ねえ見て、さっきゑり善の浴衣の投稿を見ていたんだけど、こんなかわいいのもあるみたい。」
そういって陽太に見せたのは先ほどスクロールした先に載っていたお子様用浴衣の写真である。白地にピンク系統の色で蝶の柄が染められ、その上にはリボンに形作られた黄色の兵児帯が乗っている。
「これなに?」
今までの人生で和服を着たのは片手で数える程度であろう陽太が不思議そうな顔をして京子を見る。
「浴衣だよ。子ども用の。」
「これが浴衣?生地ってこと?」
「そう、ゑり善では反物って言ってこの生地の状態からお仕立てするの。自分のサイズに合わせてお仕立てしてくれるから昨年誂えた浴衣も着やすかったのよ。」
「へえ…で、これを椎香に?」
「椎香は虫が苦手みたいだからこの柄は選ばないかもしれないけど…この一年で結構背が伸びたから、去年気に入って着てくれてた甚平さん今年はもう着られないだろうし、浴衣を仕立ててあげられたらなって思って。」
「でもお仕立てって高いんじゃないの。今年も新しい甚平買ってあげたらいいじゃん。」
生真面目な陽太は比較的財布の紐も固い。このタイプを説得するにはこのお買い物にいかに価値があるかを伝える必要がある。去年自分の浴衣を誂え、いずれ娘にも…と思ってはいたものの京子も今すぐに考えていたわけではない。けれど早く感じられる娘の成長、可愛らしい浴衣の写真を実際に目にしてはお買い物モードに心が傾いてしまった。
「お母さんが言ってたんだけど、子どもの浴衣は成長してからも長さを出せるように、揚げを取るって言って多めに生地を縫い込むんだって。お洋服や既製品は小さくなったらそこで終わりだけど、そうやって仕立てたものは長いこと着られるよ。」
「長い目で見ればコスパがいいってことか…」
と陽太は考え込むような表情をしながら夕食のおかずを口に入れる。ゆっくりと噛み、それを飲み込んだ後にまた口を開いた。
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2025/11/28

紅葉も見頃を迎え、本格的な冬の足音が近づいてまいりました。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

大ヒットを記録している映画『国宝』
観に行かれた方も多いのではないでしょうか。
もともと歌舞伎がお好きな方、話題になって観てみたら歌舞伎自体にも興味を持たれた方。様々いらっしゃると思います。
私も鑑賞いたしました。一人の伝記を体感しているように物語世界に引き込まれ、あっという間の3時間でございました。

さて、そんな歌舞伎ブームの今年ですが、12月1日より南座にて「吉例顔見世興行」が始まります。
顔見世自体については昨年のブログでもお話しさせていただきましたが、今回は顔見世おすすめのコーディネートをご紹介いたします。

一年でもっとも重大な興行とされてきた顔見世。
普段の歌舞伎鑑賞とはまた違った特別な装いで行きたい。
「お着物で顔見世」が憧れだった。
皆様がお着物も顔見世もダブルでおたのしみいただけるよう、少しでも参考になりましたら幸いです。

 

~顔見世でお召しになる着物について~
顔見世はもともと、「この一年はこちらの顔ぶれでまいります」という、役者さんのお披露目の場でした。
そのお祝いの意味を込め、普段の歌舞伎よりも特別感を出して、染めのお着物をお召しになる方が多いように思います。
ということで今回は“フォーマル感のある舞台鑑賞コーディネート”を中心にお届けします。

 

訪問着編~
顔見世コーデ 訪問着

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2025/08/26

いつも誠にありがとうございます。ゑり善の亀井彬でございます。

立秋を迎え、京都では雨が降ることも多く、ようやく朝晩を中心に涼しい風を感じるようになってまいりました。お盆や夏祭り、納涼などで袖を通した夏物も、着ることができるのは、あともう少しかと、最後の着心地を確かめております。

さて、ご家族様がお集まりになる8月からゑり善の京都本店をはじめ各店では振袖や七五三に関するお着物を取り揃えてまいりました。お子様やお孫様と一緒にお着物を見ながら団欒されるお姿。このような景色がお着物を次の時代に伝えていく大切な時間なのだと実感いたしております。

さて、今回は、お宮参りのお祝い着である「初着」についてご紹介をさせていただきます。
古くから大切にされてきた成長を祝う行事であるお宮参り。その奥深い世界とそこに込められた願いを知っていただけましたらと存じます。

■ 冠婚葬祭という考え方

「冠婚葬祭」という言葉は、私たち日本人が生活の中で最も大切にしてきた儀礼である冠礼、婚礼、葬儀、祭祀のことをさします。喜びも悲しみも日常におきる節目として、日本の美意識が込められたこの儀礼のことを改めて見つめなおすことは、とても意義があると感じております。

「冠婚」の”冠”とは、もとは「加冠」、つまり「元服」のことをさします。”元”は頭のこと、”服”は身に着けることであり、頭に冠や烏帽子(えぼし)をつけることが言葉の由来になっております。子どもの成長の節々にお祝い事をして、日々の成長を感謝して気持ちを新たにするしきたりといえるでしょう。

着物の仕事をするようになってから、「七つまでは神の内」という言葉を伺ったことがございます。わが子の誕生から、日々成長できることが決して当たり前ではないことをしっかりと認識しながら、無事の成長を神様に感謝するという大切な心がここに込められています。

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2025/05/21

前回のあらすじ
30代になりあらたな趣味として着物をはじめようと思い立った恵理子。着物玄人の母 善子に相談するとまずは浴衣から誂えることを提案され、姉 京子も一緒に祇園祭に行くことに。3人でゑり善を訪れ、各々自分好みの浴衣と巡り合った。

大人浴衣コーディネート

 

それぞれのトータルコーディネートが完成し、店員が仕立ての確認を始める。
「別途取り付け代がかかりますが、お尻のあたりの引け防止になる居敷当はお付けいたしますか?」
「私はお願いします。衿も広衿でお願いできるかしら?」
「かしこまりました。裏地の衿裏をつけて広衿仕立てにさせていただきますね。」
着物を誂えることに慣れている善子は自分の仕立て方が確立されているのか、すぐさま答える。反対に、お誂えが初めての恵理子の頭にははてなマークが浮かび始めたようだ。
「居敷当?衿??」
「私みたいにお茶をしていると立ったり座ったりする動作が多くてお尻のあたりの生地が引っ張られやすいのよ。それを防止する補強としてつけるのが居敷当ね。」
「奥様の仰る通りでございます。また、浴衣の場合は透け具合を気にされる方もいらっしゃいますので、一枚布をあてることで透け防止の意味を兼ねる方もいらっしゃいます。」
「白地の綿絽だとやっぱり透けますか…?」
京子が不安げに尋ねる。
「実際は中に浴衣スリップをお召しいただきましたら、そこまで心配はございません。本来は縫い目の引きつれを防ぐものですので。」
「私はお茶もしていないし紺地だからつけなくて大丈夫かな。」
悩む京子の隣で恵理子はからっとしている。
「…私はやっぱり心配だからつけてください!」
「かしこまりました。お衿のほうは、お嬢様方はバチ衿でよろしいでしょうか。お着物は基本的にご自身で衿の広さを調整していただける広衿仕立てにさせていただいておりますが、浴衣は衿合わせの簡単な、すでに衿が半分に折られたバチ衿仕立てにさせていただくことが多くございます。」
着やすいほうでお願いします、とふたりとも衿はバチ衿で決定した。

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2025/05/08

浴衣コーディネート季節を疑いたくなるほどの日差しに汗ばむある初夏の日、唐突に恵理子が言った。
「私も30代に突入したことだし、なにかあたらしいことをしてみたくなってきた。お母さん着物好きだよね?私も着付けでも習ってみようかな…」
娘二人を社会に送り出し、現在は自分時間を楽しむ母善子は目を輝かせる。
「やっと興味を持ってくれたのね!今まで私が着付けてあげるって言っても着ようともしてくれなかったのに…あなたたちときものでお出かけを楽しめる日が来たらいいのにってずっと思ってたわ。」
「いや、でもやっぱり難しそうだしほかの趣味を探そうかな…」
「じゃあ着付けも簡単な浴衣から始めるのはどう?今年の夏は一緒に浴衣で祇園祭に行きましょうよ。お姉ちゃんも一緒に!」
子どもを習い事へと送り出した足で実家に顔を出していた京子に声をかける。
「浴衣か~最後に着たのいつだろう…着物もお嫁入りのときに誂えてもらったくらいだよね?そのときに私も着付け習ったけど、もう全然思い出せないや…」
「着方を思い出すのにも、浴衣はもってこいよ!半巾帯なら気軽に締められるし、長襦袢との衿合わせとかも必要ないから。」
母や姉と浴衣でのお祭りを想像し、やる気が湧いてきたのか恵理子は楽しそうに話す。
「久しぶりに家族でお出かけ、なんかいいね。学生時代に買った、色のたくさん入った既製品の浴衣は持ってるけど、せっかくなら今の自分にあった浴衣が欲しいな。」
「それならこれからみんなで浴衣を見に行きましょうよ。自分の寸法で誂えると着やすいのよ。せっかくだから私も新しく買っちゃおうかしら。」

 

ゑり善 店内

そうして親子はゑり善へと足を踏み入れた。

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2025/01/09

いつも「きものを愉しむ」を読んでくださっている皆様へ

新年あけましておめでとうございます。京ごふくゑり善の亀井彬でございます。

例年に比べると比較的暖かく、また穏やかな日差しを感じる新年となりました。日本の寿ぎのひと時、皆様はお着物にお袖を通されましたでしょうか。

京都本店がある四条河原町の付近ではお着物姿のお方同士でご挨拶を交わされる姿を目にするなど、この時ならではの新年の景色が広がっており、とても嬉しく思っております。

本日1月9日には八坂神社の蛭子船巡行が行われます。「祇園のえべっさん」には商業を営む多くの人々が商売繁昌を祈願してお参りされますが、今日は七福神を乗せた蛭子船が石段下・四条烏丸間を巡行するのです。こうした行事ひとつひとつも街と街を、また人と人とをつなぐ大切なひと時であることを実感致します。

さて、いつも弊社のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。本ブログは私たちが日々仕事を通して感じている様々なことを、読み物としてご覧いただければと思い、HPのリニューアルを行いました2022年3月より更新を続けてまいりました。

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京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」代表取締役社長として働く「亀井彬」と京都で営業として働く「久保田真帆」 二人が日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできましたら幸いです。