紅葉も見頃を迎え、本格的な冬の足音が近づいてまいりました。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

大ヒットを記録している映画『国宝』。
観に行かれた方も多いのではないでしょうか。
もともと歌舞伎がお好きな方、話題になって観てみたら歌舞伎自体にも興味を持たれた方。様々いらっしゃると思います。
私も鑑賞いたしました。一人の伝記を体感しているように物語世界に引き込まれ、あっという間の3時間でございました。

さて、そんな歌舞伎ブームの今年ですが、12月1日より南座にて「吉例顔見世興行」が始まります。
顔見世自体については昨年のブログでもお話しさせていただきましたが、今回は顔見世おすすめのコーディネートをご紹介いたします。

一年でもっとも重大な興行とされてきた顔見世。
普段の歌舞伎鑑賞とはまた違った特別な装いで行きたい。
「お着物で顔見世」が憧れだった。
皆様がお着物も顔見世もダブルでおたのしみいただけるよう、少しでも参考になりましたら幸いです。

 

～顔見世でお召しになる着物について～
顔見世はもともと、「この一年はこちらの顔ぶれでまいります」という、役者さんのお披露目の場でした。
そのお祝いの意味を込め、普段の歌舞伎よりも特別感を出して、染めのお着物をお召しになる方が多いように思います。
ということで今回は“フォーマル感のある舞台鑑賞コーディネート”を中心にお届けします。

 

～訪問着編～

襲名披露もあるときは特に、そのお祝いの意味を込めておもいきって華やかに、格式のある訪問着をお召しになるのはいかがでしょうか。
歴史ある歌舞伎への敬愛をこめて、お着物も古典柄で正統派のものを選びました。刺繍で几帳を表した一枚です。訪問着の中ではシンプルな柄つけですが、立体的な刺繍が存在感を放ちます。
明るくスポットライトで照らされた舞台に対して、客席は暗くなります。そのようななかでも彩りを添えられるよう、好きな役者さんに気づいてもらえるよう、帯も少し華やかに。

 

～付下げ編～

続いては厳かな雰囲気をイメージして、落ち着きのある同系色コーディネートをご紹介いたします。
笹柄の付下げに天平裂地の袋帯です。お着物の藤グレーの地色と袋帯の紫色を調和させました。帯締めは締め色に濃いめの色を合わせましたが、帯上はあえて色を足さずにお着物の地色に合わせたものを。
大きめに描かれた笹のお柄や帯の金色が前に出るお着物と帯ですので、静かながらもしっかりと格のあるものを意識しました。

 

～小紋編～

小紋のなかでも少し格のある、飛び柄をお選びになられるのも良いと思います。
金彩で宝尽くしをあしらった小紋に、かづら帯調に幾何学模様や草花、お道具を並べたなごや帯を合わせました。こちらのなごや帯も袋帯に比べて気軽にお締めいただけますが、銀が華やかで格調高さを後押しします。
帯に様々な色が使われていますので、そこからお好きな色を小物に持ってきていただくとまとまりのあるコーディネートになります。今回は12月の顔見世イメージということで、すっきりとした色合いのお着物と帯のなかにもあたたかみをプラスできるよう、小物は暖色で合わせました。
“季節感”もお着物のコーディネートを考える際に外せないポイントです。

 

…と、ここまでコーディネートをご紹介させていただきましたが、「あくまで固いことをいうなれば」のお話です。

先日このような興行にも関わりのある方からご意見を頂戴する機会がありまして、その方の言葉を借りるなら「晴れの場、晴れの日を寿ぐお召し物」が舞台からも嬉しいとのことでした。

一年の自分へのご褒美に観に行かれるという方も多い顔見世。
昨年のブログでも申し上げたように、ご自身にとって大切な一枚に袖を通していただく、ということも大切に思います。
ご自身で買ったお着物、お気に入りの一枚、一張羅。そのようなお着物も“晴れの日を寿ぐお召し物”であることでしょう。

 

～おまけ　演者・演目からコーディネートを考える～

今年の顔見世は八代目尾上菊五郎さん・六代目尾上菊之助さん襲名披露の場。お祝いの意味も込めて菊をコーディネートに取り入れるのもおしゃれだと思います。
写真は大胆に菊を描いた金彩の染帯。飛び柄小紋・色無地・軽めの付下げなど幅広く合わせていただけます。

 

また、こちらはとある演目を柄に表現した付下げです。歌舞伎通のかたはすぐにおわかりでしょうか。
歌舞伎にちなんだお着物や帯もつくられることがありますので、そのような柄を身に纏って歌舞伎への愛を表現していただくのも楽しいのではないでしょうか。
「その柄はもしかして、あの演目の…？」なんて会話の弾むこともあるかもしれませんね。

 

お着物も観劇も、愉しむ気持ちが何よりも大切に思います。
また、お着物自体をおたのしみいただけたらさらに嬉しいのですが、お着物というものは、観劇やお食事など特別な場所に着ていくことで愉しさを増幅させるものでもあると思います。
お着物が皆様にとって大切な思い出に彩りを添えるものであり続けますように。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
寒さ厳しい乾燥の季節になってまいります。皆様ご自愛の上、良き年末をお過ごしくださいませ。

本店営業・久保田真帆