ゑり善がおすすめする「色無地」~”白生地”へのこだわり
いつもゑり善のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
京都の師走の街を彩った南座での吉例顔見世興行も本日が最終日となり、いよいよ年末のお仕事納め…という頃になってまいりました。
今年2025年はいかがでしたでしょうか。お着物の存在が、皆様にとりまして生活をより豊かにするものになっておりましたら、何より嬉しく存じます。
さて、今年最後のブログでは、「色無地」についてお話をさせていただきます。
以前のブログでは、”色”に焦点をあてて色無地の魅力を紹介をさせていただきましたが、今回はゑり善の色無地の”生地”へのこだわりをご紹介いたします。
どうぞ最後までお付き合いいただけましたら幸いです。
■色無地に宿る品格
お着物の中でも、礼装からご普段着まで、とても汎用性の高い着物が「色無地」です。
白い糸で織り上げた”白生地”に、引き染めや浸染などの技法で、色が染め上げられていきます。
さりげない織の柄に、お気に入りの色が染められたシンプルで落ち着きのある着姿からはさりげなく品格がのぞきます。
一言に白生地といっても、実は、繭の種類や糸の太細、織の組織などの組み合わせは無限に広がっております。
縮緬と呼ばれるシボのあるものから、光沢のある綸子など、手触りも異なります。
柄付けも小さな柄から大きな柄、総柄や飛び柄など、多岐にわたります。
そうした白生地の特徴を活かしながら、美しい色に染め上げた着物の数々。同じ生地でも異なる色に染め上げると、これほどまでに印象が変わるのかと思うほどです。
「色無地に始まり、色無地に戻る」というお言葉を聞いたことがありますが、シンプルだからこその奥深い魅力が人の心を惹きつけるのだと実感します。

■ゑり善がこだわる生地
さて、そんな色無地ですが、ゑり善には長年大切に扱ってきたきたお品がございます。
これまで丁寧にひとつひとつお客様へお届けしてきたゑり善オリジナルの生地のご紹介をいたします。
(取扱商品のページでもご紹介いたしております)
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【1】浜ちりめん『一期一会』
「縮緬(ちりめん)」とは、右撚りと左撚りの強撚糸(強く拠った糸のこと)を交互に打ち込んで平織にした後、精錬してシボ(小さな波のような凹凸)を出した絹織物のこと。古くは天正年間に、泉州堺の織工が中国の民から織法を伝え、京都西陣で織られてから全国に広まったとされています。
そんな縮緬の中でも、独自のシボや風合いを出すために、よこ糸の撚り回数、製造管理などにも細かくこだわって作られているものが、滋賀県長浜市でおられている「浜ちりめん」です。
伊吹山の雪解けによる伏流水を撚糸に使用し、軟水である琵琶湖の水を精練に使用されているいることが、手触りや染めの色にもよい影響があるといいます。
シンプルで気が抜けない、柄のない”無地”を織り上げることは至難の業。妥協のない丁寧な仕事による美しい生地を是非ご覧くださいませ。
こちらの白生地の特徴としては、独特の凹凸が生む奥行のある色合い。
明るい色でも白っぽくなりすぎず、濃い色に染めると重厚感と個性が際立ちます。
また、強撚糸によって正座をしていても皺になりにくいと、お客様からご好評をいただいております
なお、残念ながらこちらの生地を長年織ってくださっていた織本さんは、惜しまれながらも廃業されてしまいました。
開始当時に「一期一会」と名付けた今では織ることができない残された生地を、今も大切に取り扱わせていただいております。

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【2】丹後ちりめん 三重織『花さらさ』
先に紹介した「一期一会」がシボだけの”無地”であることに対して、こちらの白生地は”柄”が織り上げられています。
「花さらさ」と名付けたこの白生地の柄のモチーフは、正倉院裂の格調のある唐草になっております。帯を変えて春秋冬と広くお使いいただきたいものですので、あえて季節感の出すぎないように。慶仏用ともにお使いいただけるようにも配慮しております。
この生地の最大の特徴は、緯(よこ)糸に3種類の糸を使用していること。
地緯という地の部分にあたる糸に加えて、柄を表現する絵緯には、地緯よりも少し太い糸と、柞蚕という野蚕の繭からつくられた絹糸の2種類を使っています。この工夫のおかげで、染め上げた後の柄がはっきりと浮き出て、ご着用されたときにより立体的に見えるようになっております。
実は、経(たて)糸の数を一般的な白生地の倍程度にしていただいており、緯糸の打ち込みも通常よりも5割程度多く織っていただいております。
しなやかかつしっかりとした素材感には、緻密な糸の組織の作り方があります。
色合いは引き染めを2回繰り返して…薄めの色合いを下染めした後に、もうひと色重ねることで、”むっくり”とした色の仕上げになっております。
先ほどご紹介した柞蚕の糸は、少し染まりにくいという特徴もありますので、その微妙な色の違いにもご注目いただきたいところ。
独特の光沢と風合いを是非ともお近くでお試しになってくださいませ。

■生地と色に向き合って
今回は弊社が長年大切にしてきたオリジナルの色無地のご紹介をさせていただきました。
「色無地」だからこそ、際立つ白生地の奥深い世界を少しでも感じていただけましたら幸いです。
帯合わせを変えながら長く楽しめる色無地。
是非こだわりの生地とのお出会いから、皆様を引き立てるような色をお探しいただけましたらと存じます。
店内にある色合いからお選びいただくことはもちろん、お客様と相談しながらお好きなお色合いに染めることも承っております。
お着物好きのお方はもちろん、これから始めたいというお方も、是非何なりとご相談くださいませ。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
ゑり善 亀井彬
![京ごふく ゑり善[創業天正12年]](https://www.erizen.co.jp/wordpress/wp-content/themes/erizen/img/common/logo_pc.png)

