きものを愉しむ

2026/07/28

本格的な夏の到来です。皆様暑さに負けずお過ごしでしょうか。
肌を焼き付けてくるような日射し、少し外を歩いただけでもにじむ汗。今年から40度を越える日は「酷暑日」と名付けられ、夏の気温の高さをさらに実感いたします。
その影響で「夏は暑すぎて着物が着られない」というお声を耳にする機会も増えました。厳しい暑さを考えますと、そのお気持ちもよく分かります。

とはいえ、四季のある日本にはそのシーズンにしか楽しめないものがあるでしょう。
夏の着物もそのひとつだと思います。夏ものだけの透け感のある生地や、夏の植物など季節の限られたお柄…
前回のブログでも、恵理子さんは「夏の着物が着られる時期だから」と、着物を着るためにお出かけされていましたね。
着物は暑くて着られないけれど浴衣なら…という方もいらっしゃると思います。
ということで今回は浴衣と着物それぞれに、夏のお召し物の良さを考えてみたいと思います。

お先に申し上げておきたいのはTPO、つまり着ていく場面にふさわしいお召し物というものはあれど、優劣はないということです。どのようなものにも・ことにも・人にも一長一短存在するのと同じです。
浴衣だから良い、着物だから良いというよりは、ご自身のお好みやご用途に合った夏のお召し物の愉しみ方を見つけていただけましたら幸いです。

 

 

浴衣のおすすめポイント~
浴衣の一番の良さは、「気軽に着られる」というところでしょう。この言葉は着付け、価格、お手入れなど多角的な面から見ても当てはまります。
それぞれの視点からご紹介いたします。

(さらに…)

2026/07/08

絽の小紋(薄グレー地、幾何学模様)に夏のなごや帯(白地、雪輪)コーディネート小千谷縮の生地で水色無地、絽の帯上

とある年の7月16日。恵理子は朝早くから目を覚まし、部屋の空調を入れた。
着物を着るための第一歩である。

 

昨年母の善子、姉の京子とともに浴衣で歩いた祇園祭の街並み。今までも同じ景色のなかを歩いたことはあったものの、普段着ていなかった日本の伝統装束に身を包んでいるからか、初めて足を踏み入れた土地のような特別な感覚があった。
今年、姉の京子は今の家族で祇園祭を楽しむらしい。先月会ったときに主人の陽太さんと娘の椎香ちゃんに浴衣を誂えることになったと、反物を合わせているときの写真を嬉しそうに見せてくれた。
母の善子も遠方から旧友が来るらしく、京都の伝統的なお祭りを楽しんでもらおうと案内に張り切っていた。
一方恵理子はというと、シフト制の仕事でせっかく宵山の日にお休みが取れたというのに、ことごとくまわりと予定が合わなかった。人口密度高まり熱気のあふれる街に繰り出すよりも、ひとり優雅におうち時間を楽しむのも乙ではないかという考えもよぎったが、恵理子は着物が着たかった。

昨年の祇園祭の後、着つけを習い始めた恵理子。はじめは着物に帯に手順を覚えるのが大変で、着物を気軽に着るなど長い道のりになる予感がしていたが、慣れてしまえばこちらのものであった。すっかり着物にはまってしまって、趣味の美術館・博物館巡りをするとき、母の善子と一緒に出かけるときなど、隙あらば着物でのお出かけを楽しんでいる。
せっかく7月になったのだ。夏着物が着られる季節だ。昨年は着付けを習い始めたばかりだったから、まだ夏着物にを袖を通したことはない。自分の夏着物はまだ持っていないが母のがある。少々裄も身丈も短いが、腰ひもの位置を腰骨のあたりに下げればおはしょりの長さは出せるし、自分が楽しむために出かけるだけだから裄も多少短くたって気にしない。せっかくなら新たな季節の着物も楽しみたいではないか。そうなれば祇園祭限定の行きたいお店もある。

 

そう決心したのが2週間ほど前のことである。
着物を着たい!という気持ちは大きくても恵理子にも億劫になってしまうときだってある。
その気持ちがしぼんでしまわないように、着物を着る前日にはしわのばしの意味も兼ねて着物と長襦袢はきものハンガーに吊るしておくようにしている。帯、そのほか着付けに必要なものもその近くに準備しておくのが着物を着る前のルーティーンになっている。そして快適に着替えられるように朝起きたら一番に空調を入れる!というのを決心して恵理子は昨晩床についた。

そうして恵理子は決心通りに起き上がり、そのまま身支度を整えて今に至る。

絽の小紋(薄グレー地、幾何学模様)に夏のなごや帯(白地、雪輪)コーディネート小千谷縮の生地で水色無地、絽の帯上に田上惠美子さんの黒い帯留、水色の三分紐
(さらに…)

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」代表取締役社長として働く「亀井彬」と京都で営業として働く「久保田真帆」 二人が日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできましたら幸いです。


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