きものを愉しむ

2025/11/28

紅葉も見頃を迎え、本格的な冬の足音が近づいてまいりました。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

大ヒットを記録している映画『国宝』
観に行かれた方も多いのではないでしょうか。
もともと歌舞伎がお好きな方、話題になって観てみたら歌舞伎自体にも興味を持たれた方。様々いらっしゃると思います。
私も鑑賞いたしました。一人の伝記を体感しているように物語世界に引き込まれ、あっという間の3時間でございました。

さて、そんな歌舞伎ブームの今年ですが、12月1日より南座にて「吉例顔見世興行」が始まります。
顔見世自体については昨年のブログでもお話しさせていただきましたが、今回は顔見世おすすめのコーディネートをご紹介いたします。

一年でもっとも重大な興行とされてきた顔見世。
普段の歌舞伎鑑賞とはまた違った特別な装いで行きたい。
「お着物で顔見世」が憧れだった。
皆様がお着物も顔見世もダブルでおたのしみいただけるよう、少しでも参考になりましたら幸いです。

 

~顔見世でお召しになる着物について~
顔見世はもともと、「この一年はこちらの顔ぶれでまいります」という、役者さんのお披露目の場でした。
そのお祝いの意味を込め、普段の歌舞伎よりも特別感を出して、染めのお着物をお召しになる方が多いように思います。
ということで今回は“フォーマル感のある舞台鑑賞コーディネート”を中心にお届けします。

 

訪問着編~
顔見世コーデ 訪問着

(さらに…)

2025/11/08

段々と空気が冷たくなり、きもののあたたかみが嬉しく感じる季節となりました。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

さて皆様、突然ですが11月15日は何の日かご存知でしょうか?

…そうです、きものの日です!

 

~きものの日とは~
「きものの日」とは昭和41年に結成された全日本きもの振興会により制定されました。

全日本きもの振興会のサイトによりますと、制定のきっかけは昭和39年の東京オリンピックに訪れた世界各国の方々から、日本の民族衣装であるはずなのにきもの姿の方が少ないとの声が上がったことによるそうです。

11月15日は七五三のお詣りをされる方も多くいらっしゃいますよね。
もとは旧暦の11月が収穫を終えて実りを感謝する月、15日は満月で吉日にあたることから、氏神様への感謝も兼ねてこの日にお詣りをしていたそうです。
その七五三にもちなんで、日本の民族衣装であるきもののシンボルとなる日として、「きものの日」にはきものの普及と振興を図ったイベントなどが各地で行われております。

 

そのような「きものの日」、11月15日はお着物に袖を通してみてはいかがでしょうか。
目的の場所が無くても、お着物姿でゆっくりと歩いていると、気になるカフェを見つけたり、気になっていた美術館や博物館を思い出したり…なんてこともあるかもしれません。

「普段のお出かけ用」のお着物といえば、【】や【小紋】があげられます。
以前、初めてのお着物としても小紋をおすすめさせていただきました。
そのときは、帯合わせもしやすく少し改まったお席にもお召しいただける「飛び柄小紋」をご紹介させていただきましたが、今回は「お出かけ着としての小紋」にフォーカスをあててみようと思います。

 

~おしゃれ着としての飛び柄小紋~
飛び柄小紋コーディネート

(さらに…)

2025/10/31

いつもブログをご覧いただきまして誠にありがとうございます。
ゑり善の亀井でございます。

記録的に暑かった夏も終わり、秋が足早にやってきております。今年もあと2か月。
紅葉にはまだもう少し…という様子ですが、重なりあう色の美しさが街を彩る季節となりました。
涼しくなる中で着物にも袖を通しやすい季節、皆様にとってもきものを「愉しむ」ひと時がございましたら幸いです。

さて、今回のブログでは、すでにHPではお知らせいたしておりました、ゑり善がご協力したユニークな取り組みをご紹介いたします。

その名も「第1回京都駅ビル芸術祭(ゲイジュツ ノ エキ 2025/GNE)」です。

———————————————————
開催期間:2025年10月14日~2025年11月3日
場  所:京都駅ビルおよび連携サテライト会場
詳  細:https://kyotostation-gne.jp/

———————————————————

世界各国が集結し、国の文化や価値観に触れる機会となった大阪万博。
こうした交流の場をなくしてはいけないと、万博が終わった翌日から、駅という大きな建物そのものを、ひとつのアート作品として見立てるという試みです。
現代アートや伝統工芸、デジタル表現、音楽パフォーマンスなど、職人やアーティストの作品を通じて、国内外から訪れる人々と地域と企業がつながり、駅から新しい視点や創造が生まれる “文化・芸術のプラットフォーム” となることを目指しておられるイベントです。いよいよ今週末を残す限りとなりました。

私たちゑり善が参加させていただきましたのは、伝統と現代アートのコラボレーション。マッシュアップ作品です。

天正12年創業のゑり善という会社は、京都裏寺にて京染め悉皆業として商いを始め、その技術を生かして半襟の制作に携わります。

明治16年に作られた京都の専門店を紹介した「京都諸商名産玉つくし」には、「半ゑり」として「御旅町 ゑり善」との記されております。


(さらに…)

2025/10/04

いつもゑり善のブログ「きものを愉しむ」をご覧いただきまして誠にありがとうございます。京ごふくゑり善 主人の亀井彬です。

美しい秋の空と心地よい風。街に彩りが増すこの季節の景色を見ていると、時代が経っても変わらない美しさを感じることができます。日本各地にはまだまだ見たことのない素敵な景色があると思うと、実際に足を運んでみたくなりますね。「お出掛けの秋」、皆様にとりましてもお着物を愉しむそんなひと時となっておりましたら幸いです。

さて、毎年、春と秋(3月と9月)に発売される世界文化社のきものSalonの新刊が、9月に発売され書店の店頭に並んでおります。毎号、染織の世界にある「こだわり」や「技」に迫る「京のほんまもん」。今回は私の尊敬するお兄さん的な存在である大村幸太郎さんに迫る機会を頂戴いたしました。

第6回となる今回のテーマは「蠟吹雪」。
染色の世界に向き合い、着物が表現できるものを追い求め続けている大村さんとのひと時を思い出しながら、取材の際にお伺いしたお話や感じたことをつらつらと書き記します。

(さらに…)

2025/09/05

9月です。暦の上では単衣の季節です…が残暑厳しき今年の気候。
普段のお出かけや略装でお着物をお召しになる場合には、まだ夏ものにも頑張ってもらえるのでは…と思います。
そうはいっても秋の足音もだんだんと近づいてきておりますね。
私も先日秋の味覚を取り入れたお菓子を見かけ、秋だなあと感じたところです。食欲の秋ですね。

芸術の秋、スポーツの秋に読書の秋。秋は様々な楽しみがあります。
もうひとつくらい増やしても良いのではないでしょうか。“きものの秋”などいかがでしょう。
ということで、今回はこれからの季節を愉しむために…秋のコーディネートをご紹介いたします。

暑さの残る9月。
秋が深まっていく10月。
冬の準備がはじまる11月。

月ごとに考えてみましたので、少しでもご参考になりましたら幸いです。

 

~9月のおすすめコーディネート~
9月のおすすめコーディネート

もみじの柄アップ

9月からは単衣の着物に袷の帯を合わせます。
揚柳という、縦にシボ(生地の凹凸感)のはいった単衣の着物に、綴の袋なごや帯を合わせました。

(さらに…)

2025/08/26

いつも誠にありがとうございます。ゑり善の亀井彬でございます。

立秋を迎え、京都では雨が降ることも多く、ようやく朝晩を中心に涼しい風を感じるようになってまいりました。お盆や夏祭り、納涼などで袖を通した夏物も、着ることができるのは、あともう少しかと、最後の着心地を確かめております。

さて、ご家族様がお集まりになる8月からゑり善の京都本店をはじめ各店では振袖や七五三に関するお着物を取り揃えてまいりました。お子様やお孫様と一緒にお着物を見ながら団欒されるお姿。このような景色がお着物を次の時代に伝えていく大切な時間なのだと実感いたしております。

さて、今回は、お宮参りのお祝い着である「初着」についてご紹介をさせていただきます。
古くから大切にされてきた成長を祝う行事であるお宮参り。その奥深い世界とそこに込められた願いを知っていただけましたらと存じます。

■ 冠婚葬祭という考え方

「冠婚葬祭」という言葉は、私たち日本人が生活の中で最も大切にしてきた儀礼である冠礼、婚礼、葬儀、祭祀のことをさします。喜びも悲しみも日常におきる節目として、日本の美意識が込められたこの儀礼のことを改めて見つめなおすことは、とても意義があると感じております。

「冠婚」の”冠”とは、もとは「加冠」、つまり「元服」のことをさします。”元”は頭のこと、”服”は身に着けることであり、頭に冠や烏帽子(えぼし)をつけることが言葉の由来になっております。子どもの成長の節々にお祝い事をして、日々の成長を感謝して気持ちを新たにするしきたりといえるでしょう。

着物の仕事をするようになってから、「七つまでは神の内」という言葉を伺ったことがございます。わが子の誕生から、日々成長できることが決して当たり前ではないことをしっかりと認識しながら、無事の成長を神様に感謝するという大切な心がここに込められています。

(さらに…)

2025/07/24

仕立

珍しく雨の降った前祭の巡行に、炎天下のもと行われた後祭の巡行。
お天気に負けずに鉾を曳かれた方々、巡行に参加された方々勇姿に四条河原町も盛り上がりを見せておりました。
祇園祭に向けて浴衣をお仕立てされた恵理子さんたちもお祭りを楽しまれたことでしょう…

さて、そちらの「大人浴衣ものがたり」でもちらっと出ておりました仕立ての場面。
手縫いの良さや柄の出し方の工夫についてお話しさせていただきましたが、今回はもう少し深掘りしてご紹介いたします。
お着物の仕立て方、をお伝えするには私もまだまだ知識が足りませんので、基本的なところから手縫いの魅力について知るためのポイントを中心にお伝えさせていただきます。

ゑり善では新人社員を対象に、8月に夏季研修を行っております。
以前も成果報告を兼ねて絞りの技法についてご紹介させていただきましたが、昨年は仕立屋さんにもお話を伺ってまいりました。
今年の研修も約1か月後に迫ってまいりましたので、その前に昨年の研修の振り返りを兼ねてお話しさせていただきます。

 

〈きものの仕立てについて〉

~キーワードその1『つまり』~
仕立ての世界は経験が要だといいます。
生地の縮みやすさなどの状態を見極めながら、それぞれの生地に合わせて縫う強さや糸のひっぱり具合を調整していくからです。

経験を積むために、生地を知るためにまずは生地をまっすぐ縫う練習からはじまるそうです。
最初に木綿と木綿、それができるようになったら木綿と絹を縫う練習へすすみます。違う素材はまっすぐ縫うことが難しくなります。これは素材によって生地の縮み具合である「つまり」具合が異なるからです。つまりを見越して、余裕を持たせた縫合わせが必要になるのです。

様々な生地をまっすぐ縫えるように練習しながら生地の特徴、きれいに縫うための工夫の仕方を知っていきます。

 

~キーワードその2『地の目』~
結城紬

(さらに…)

2025/07/02

6月の中盤から気温が一気に上昇し、7月に入り本格的な夏が訪れました。

京都本店がある四条通りの商店街のアーケードでも祇園祭のお囃子が流れ、お祭りムードに心躍る今日この頃。「祇園祭の巡行の前後で梅雨明けする」…と幼いころから教えてもらっていたので、この時期の梅雨明けには驚くばかりです。

35℃を上回るような気温が続く中で、快適に過ごすための”衣”としての吸湿性や涼感、肌触りなど実用的な意味合いが見直されているように思います。お客様のお話では、今年は男性の方の普段使いとしての麻の甚平さんがよく売れているとか…

夏の衣の代表の一つである浴衣は、弊社では4月から店頭に並び、5月にかけては「ゑり善 大人浴衣ものがたり」としてご紹介してまりましたが、おかげさまで多くのお声がけをいただき、ひとつひとつ丁寧に、でもお召しになられる日に向けて急ぎながらお仕立てを進めさせていただいております。

浴衣からお着物のスタートに…というお話をされるお客様もおられて、改めて浴衣の着こなしが和装振興において重要な意味を持つことを感じております。

さて、今回は「夏を愉しむ衣~男性浴衣のご紹介~」と題して、男性の浴衣の着こなしについて、少しご紹介させていただきます。

●浴衣を愉しみたいと思ったら…様々な選択肢

最近では夏の衣装として浴衣を愉しみたいと思ったときに、選択肢がとても多くなり、手に取りやすいものになりました。

◇ レンタル
 なんといっても気軽に楽しめる。使うときだけ。準備やお手入れは不要

◇ 古着で購入
 寸法は出来上がったもの。
 シミや生地の痛みなどは承知の上で、安価にご自身のものとして愛用できる

◇ 出来上がりの浴衣を購入
 標準的な寸法から選択して購入。すぐに着ることができる

◇ 生地から選んでお誂え


こうした選択肢には、それぞれのメリットがありますので、ご自身のお考えに沿って、その中からご選択いただけるとよいでしょう。

その中で、私たち、ゑり善がご提供しているサービスは、4つ目の「生地から選んだお誂え」となっております。
お誂えの特徴としては…

デメリットとしては、
・費用と時間がかかる
・着た後の片付けやクリーニングが必要になる
・保管の場所が必要

一方でメリットとしては、
・身丈・身巾・裄(手の長さ)など、ご自身の寸法にぴったりの浴衣が作れる
・着崩れがしにくく扱いやすい
・いつでも自由に愉しめる
・長く愛用できる

ということがあげられます。

7月と8月の約2か月という限られた期間に愉しむものが浴衣です。お仕立てされるかどうか悩まれるというお方も多いかもしれませんが、祭事や神事、毎年恒例の行事などが多くなるこの季節は、自然と着用機会が増えるもの。このブログがお誂え浴衣の一歩となりましたら、何より嬉しく存じます。

(さらに…)

2025/05/21

前回のあらすじ
30代になりあらたな趣味として着物をはじめようと思い立った恵理子。着物玄人の母 善子に相談するとまずは浴衣から誂えることを提案され、姉 京子も一緒に祇園祭に行くことに。3人でゑり善を訪れ、各々自分好みの浴衣と巡り合った。

大人浴衣コーディネート

 

それぞれのトータルコーディネートが完成し、店員が仕立ての確認を始める。
「別途取り付け代がかかりますが、お尻のあたりの引け防止になる居敷当はお付けいたしますか?」
「私はお願いします。衿も広衿でお願いできるかしら?」
「かしこまりました。裏地の衿裏をつけて広衿仕立てにさせていただきますね。」
着物を誂えることに慣れている善子は自分の仕立て方が確立されているのか、すぐさま答える。反対に、お誂えが初めての恵理子の頭にははてなマークが浮かび始めたようだ。
「居敷当?衿??」
「私みたいにお茶をしていると立ったり座ったりする動作が多くてお尻のあたりの生地が引っ張られやすいのよ。それを防止する補強としてつけるのが居敷当ね。」
「奥様の仰る通りでございます。また、浴衣の場合は透け具合を気にされる方もいらっしゃいますので、一枚布をあてることで透け防止の意味を兼ねる方もいらっしゃいます。」
「白地の綿絽だとやっぱり透けますか…?」
京子が不安げに尋ねる。
「実際は中に浴衣スリップをお召しいただきましたら、そこまで心配はございません。本来は縫い目の引きつれを防ぐものですので。」
「私はお茶もしていないし紺地だからつけなくて大丈夫かな。」
悩む京子の隣で恵理子はからっとしている。
「…私はやっぱり心配だからつけてください!」
「かしこまりました。お衿のほうは、お嬢様方はバチ衿でよろしいでしょうか。お着物は基本的にご自身で衿の広さを調整していただける広衿仕立てにさせていただいておりますが、浴衣は衿合わせの簡単な、すでに衿が半分に折られたバチ衿仕立てにさせていただくことが多くございます。」
着やすいほうでお願いします、とふたりとも衿はバチ衿で決定した。

(さらに…)

2025/05/08

浴衣コーディネート季節を疑いたくなるほどの日差しに汗ばむある初夏の日、唐突に恵理子が言った。
「私も30代に突入したことだし、なにかあたらしいことをしてみたくなってきた。お母さん着物好きだよね?私も着付けでも習ってみようかな…」
娘二人を社会に送り出し、現在は自分時間を楽しむ母善子は目を輝かせる。
「やっと興味を持ってくれたのね!今まで私が着付けてあげるって言っても着ようともしてくれなかったのに…あなたたちときものでお出かけを楽しめる日が来たらいいのにってずっと思ってたわ。」
「いや、でもやっぱり難しそうだしほかの趣味を探そうかな…」
「じゃあ着付けも簡単な浴衣から始めるのはどう?今年の夏は一緒に浴衣で祇園祭に行きましょうよ。お姉ちゃんも一緒に!」
子どもを習い事へと送り出した足で実家に顔を出していた京子に声をかける。
「浴衣か~最後に着たのいつだろう…着物もお嫁入りのときに誂えてもらったくらいだよね?そのときに私も着付け習ったけど、もう全然思い出せないや…」
「着方を思い出すのにも、浴衣はもってこいよ!半巾帯なら気軽に締められるし、長襦袢との衿合わせとかも必要ないから。」
母や姉と浴衣でのお祭りを想像し、やる気が湧いてきたのか恵理子は楽しそうに話す。
「久しぶりに家族でお出かけ、なんかいいね。学生時代に買った、色のたくさん入った既製品の浴衣は持ってるけど、せっかくなら今の自分にあった浴衣が欲しいな。」
「それならこれからみんなで浴衣を見に行きましょうよ。自分の寸法で誂えると着やすいのよ。せっかくだから私も新しく買っちゃおうかしら。」

 

ゑり善 店内

そうして親子はゑり善へと足を踏み入れた。

(さらに…)

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」代表取締役社長として働く「亀井彬」と京都で営業として働く「久保田真帆」 二人が日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできましたら幸いです。


→ ゑり善LINE公式アカウント
お気軽にメッセージをお送りください。