きものを愉しむ

2025/09/05

“きものの秋”を愉しむ

9月です。暦の上では単衣の季節です…が残暑厳しき今年の気候。
普段のお出かけや略装でお着物をお召しになる場合には、まだ夏ものにも頑張ってもらえるのでは…と思います。
そうはいっても秋の足音もだんだんと近づいてきておりますね。
私も先日秋の味覚を取り入れたお菓子を見かけ、秋だなあと感じたところです。食欲の秋ですね。

芸術の秋、スポーツの秋に読書の秋。秋は様々な楽しみがあります。
もうひとつくらい増やしても良いのではないでしょうか。“きものの秋”などいかがでしょう。
ということで、今回はこれからの季節を愉しむために…秋のコーディネートをご紹介いたします。

暑さの残る9月。
秋が深まっていく10月。
冬の準備がはじまる11月。

月ごとに考えてみましたので、少しでもご参考になりましたら幸いです。

 

~9月のおすすめコーディネート~
9月のおすすめコーディネート

もみじの柄アップ

9月からは単衣の着物に袷の帯を合わせます。
揚柳という、縦にシボ(生地の凹凸感)のはいった単衣の着物に、綴の袋なごや帯を合わせました。

着物のほうは淡い桃色の地色に、白でほんのりと紅葉があしらわれています。
だんだんと秋の気配を感じる9月。色づく紅葉を待ち遠しく思うように、お着物にさりげなく秋を取り入れてはいかがでしょうか。

帯は青磁色に霞ぼかしのものを。爪掻本綴作家である伊達静さんの作品です。
爪掻本綴とは、ぎざぎざに切った爪を用いて糸を寄せながら、柄を織り出していく綴織りのことです。爪を使うことで、細かく目の詰まったなめらかな柄に仕上がります。

綴の帯は柄の雰囲気にもよりますが、軽めの付下げなど、フォーマルなお着物にも合わせることができます。
こちらの帯も飛び柄の小紋に合わせておりますので、準フォーマルなコーディネートとしてお召しいただけます。

昨年9月の京都の気温を振り返ると、30日中24日が最高気温30度を超えておりました…
「見た目の涼しさ」もまだまだ大切に思います。

小物はクリーム色に観世組の帯締めでフォーマル感を後押ししつつ、帯上のミントグリーンで上品にまとめております。

 

~10月のおすすめコーディネート~
10月のおすすめコーディネート

袷の着物に袷の帯を合わせる10月。
秋は新米の季節ですね。
こっくりとした季節感のある色合いをイメージして、黄八丈に稲穂の染帯を合わせました。

黄八丈は東京の八丈島で作られる織物のこと。島に自生する八丈刈安・マダミの樹皮・椎の木の樹皮を使って黄・樺・黒の3色に糸を染めます。
こちらは、マダミの樹皮から樺色に染めた糸を中心に織り出したお着物。黄八丈めゆ工房の山下芙美子さんの作品です。3色の濃淡を自在に使い、奥行きのある表情豊かなお着物を作られる山下さんらしい色合いです。

稲穂の帯の中に見えるのは、鳥よけの鳴子。風で揺れて稲穂はそよそよと、鳴子はからからと音が鳴り出しそうな帯です。

小物もアクセントになるように、濃いめの色で合わせました。
着物から少し濃い色を意識したえんじ色の帯締めは、房が小田巻という丸い形になっていて、深みの中にもかわいらしさがあります。
帯上は稲穂の色を深めてからし色の絞りのものを。粋にまとまるように考えました。

 

~11月のおすすめコーディネート~
11月のおすすめコーディネート

吹寄せの柄アップ

11月はフォーマルコーディネートをご紹介いたします。

吹き寄せ柄の付下げに、細く織り込まれた線模様が印象的な袋帯を合わせました。
イメージするのは七五三でのお母様のお召し物。お子様のハレの行事にご家族でお着物をお召しになるのはいかがでしょうか。

木の葉や花びらが風に舞う様子を表した吹寄せという柄は、冬の予兆を感じるような秋のイメージがあります。そのため秋にお召しいただくとぴったりだと思いますが、お着物の柄には桜や青紅葉、松葉に萩といった様々な季節の植物が使われていますので、春の学校行事などにもお召しいただけます。

晩秋の涼しさを緩和できるよう、小物は暖色で。
帯締めには、お着物の桜にほんのりと入っているピンクを取り入れました。
帯上もピンクぼかしで合わせつつ、上品な帯になじむクリーム色であたたかみを加えています。

 

以上3シーン、ご紹介させていただきました。

“季節感”はお着物のコーディネートでも大切になってくるポイントです。
季節限定の柄はお召しいただける期間が短くなってしまうため、せっかくなら長い間使えるものを、というのも一つのお着物の選び方です。そのようなときは色で季節感を演出するのもおすすめです。
しかし「季節限定の特別感」というのも気持ちが高まると思いませんか。

銀座店より始まりまして京都本店名古屋店へと続いていく秋の新作発表の会、双美展では「季のめぐり」と題しまして秋冬柄のお着物や帯を特集いたします。
あの着物や帯の季節だから着物でお出かけしよう!お出かけできる場所を探そう!
そう思っていただけるような愉しみ方もお手伝いできましたらと思います。

また、11月のおすすめコーディネートとして七五三の行事をイメージいたしましたが、お子様の七五三のお祝い着、更には振袖も多数ご用意させていただきます。
大切なお子様の成長の節目となる行事。
多くの方が七五三をなされる11月、成人式の行なわれる1月に向けてまだまだお仕立て間に合いますので、ぜひご家族皆様で足をお運びいただけましたら幸いです。

Instagramでも季節に合わせてコーディネートをご紹介しておりますので、ぜひそちらも覗いてみてくださいませ。
もちろん今回ご紹介したコーディネートはあくまで一例で、お召しいただく場所や状況によっておすすめのコーディネートは変わってまいります。
こんなときはどんなお着物を着たらいいの?と迷われましたらぜひお気軽にご相談くださいませ。

本店営業・久保田真帆

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」代表取締役社長として働く「亀井彬」と京都で営業として働く「久保田真帆」 二人が日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできましたら幸いです。