きものを愉しむ

2023/06/16

浴衣のおすすめポイントその2~見た目編~

暦の上でも梅雨入りを迎えました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

梅雨が明けると夏がきて、本格的に浴衣の季節が訪れます。
ということで夏の準備としての浴衣連載も今回で最終回です。

浴衣の種類着心地の良さとご紹介してきましたがまだお伝えできていないのが色うつりの良さ。
色うつり、と一言にいっても染料や染め方はもちろん、
生地や柄の出方など様々な部分が関係して見た目の良さは生まれています。
また、帯合わせも例外ではありません。

今回はそんな色の良さを叶える秘密を、コーディネートをご紹介しながら探っていこうと思います。

~生地から探る 綿コーマ~

綿コーマは細い糸で織り込むことで目が詰まりハリのある生地に仕上がる、
ということは前回の着心地編でも少しお伝えしたところですが、
これは見た目の良さにもつながっています。
細かく織られているおかげで生地にでこぼこが少なく、柄の線がはっきりと出ます。
曲線などの柄の輪郭を滑らかさに美しく出せるからこそ、
たおやかな見た目が実現するのではないでしょうか。

白地綿コーマ・朝顔の浴衣にピンクの四寸帯を合わせました。
お着物ではあまり見ない大きな柄は、浴衣ならではの特徴のひとつです。
また、ピンクや黄色など、一見派手に見えるような色の帯も、
合わせてみるとしっくりくるのが浴衣の不思議なところ。
お着物とはまた違った、浴衣ならではのコーディネートをお楽しみいただけます。

 

~染料から探る 紺色・藍色~

綿コーマや綿絽に見られる紺色は「バット紺」といわれる染料を使って染められています。
こちらは本藍をまねてつくられた染料のようですが、濃い藍色がコントラストを際立たせ、
はっきりとした粋な見た目を叶えます。

紺地綿絽の浴衣に粗紗の四寸帯です。ご年代を重ねられたら帯の雰囲気や色合いを
落ち着かせることで、まだまだ浴衣を粋にお召しいただけます。

バット染料のもとになった本藍を使用しているのは長板中形の浴衣です。
続いてはこちらに焦点を当ててみます。

 

~染め方から探る~

〈長板中形〉

バット紺に比べると、自然由来の優しさが感じられるような色合いの本藍。
また、長板中形は両面染めが特徴の浴衣です。
なぜそんな手間をかけるのかというと、こちらも見た目に関係しています。
細かい点のつながりで柄をつける長板中形は、両面の同じ位置に糊を置いて
染料が入るのを防ぐことで、柄部分の白色がはっきりと現れます。
片面染めにすると裏の藍が透けて見えてしまい、柄がぼやけてしまいます。

雪輪の柄の長板中形に小豆色、羅の四寸帯です。
長板中形は下に長襦袢をお召しになって、八寸の帯を締めて着物風に着ることもできますが、
このように四寸帯を締めて気軽にお出かけしていただくことももちろんできます。
状況に合わせてコーディネートもお楽しみくださいませ。

 

〈色もの〉

色ものの染め方は様々。反物全体を色染めしてから、
柄部分にそのまま色を重ねたり一度抜染して色を抜いてから柄の色を入れ直したり。

写真の浴衣は水を使ってぼかしを入れながら染めています。
色ものは白紺に比べて色が多い分帯合わせが難しく感じますが、
浴衣の色をどこか取り入れるとまとまりよく合わせられます。
今回は柄でもアクセントとなっている赤色を帯に取り入れました。

 

〈奥州小紋〉

茶紬の生地を使っている奥州小紋。茶色と藍色の組み合わせもおしゃれです。
こちらはところどころ入っている赤の挿しがポイント。
良いアクセントになるとともに、長板の両面染めと同じく柄がぼやけるのを防いでいます。

ここで着物風のコーディネートもご紹介いたします。
八寸の袋なごや帯を締めてちょっとしたお食事などに。
八寸の帯を締めるには帯〆や帯上も必須となってきますが、
小物合わせだけでもコーディネートの幅はぐっと広がります。
写真の輪出しの帯上はカジュアルなお着物に人気の一枚です。

 

~浴衣ユーザーの声~

コーディネートのしやすさについてもゑり善浴衣ユーザーさんにお話を伺いました。
やはり一番のポイントは白紺のシンプルな浴衣が多いので帯合わせがしやすいことのようです。
色が少ない分しまった印象になるとの声もありました。どんな帯も比較的合うので、
幅広くコーディネートができ、10年以上、長くお召しになることができます。

また、皆様も気になるのではないかと思うのが色落ちについて。
特に藍を使ったものはどうしても色落ちしてしまいますし、帯への色うつりも避けがたいようです。
しかし浴衣と帯が触れ合う部分、つまり目立たない所への色うつりですので
あまり気にせずに使い続けられるとのことでした。
色落ちも風合いとして楽しまれてはいかがでしょうか。

 

竺仙さんの浴衣は美しく色が出ることはもちろん、柄もはっきり出るように、工夫して作られています。
仕立て方も、ゑり善ではお着物と同じく手縫いでさせていただいておりますので、
どこにどの柄を出すか指定することもできますし、
仕立て屋さんが柄の出方を判断して素敵に仕上げてくださいます。

お着物のコーディネートには「格」など気にすることもありますが、
浴衣は気軽にお召しいただけるカジュアルなものの代表格ですので、
ご自身が一番気に入る姿でお召しいただくのが一番なのではないかと思います。

商品紹介のページでもコーディネートと共に浴衣を紹介しておりますのでご参照くださいませ。
ゑり善ではコーディネートのご相談も承っております。どうぞお気軽にご相談くださいませ。

 

本店営業・久保田真帆

(今までの浴衣に関する記事はカテゴリーの「浴衣」をご覧ください。)

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」の代表取締役社長として働く「亀井彬」です。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできればと思い、日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。