きものを愉しむ

2026/07/28

きもので夏を感じる

本格的な夏の到来です。皆様暑さに負けずお過ごしでしょうか。
肌を焼き付けてくるような日射し、少し外を歩いただけでもにじむ汗。今年から40度を越える日は「酷暑日」と名付けられ、夏の気温の高さをさらに実感いたします。
その影響で「夏は暑すぎて着物が着られない」というお声を耳にする機会も増えました。厳しい暑さを考えますと、そのお気持ちもよく分かります。

とはいえ、四季のある日本にはそのシーズンにしか楽しめないものがあるでしょう。
夏の着物もそのひとつだと思います。夏ものだけの透け感のある生地や、夏の植物など季節の限られたお柄…
前回のブログでも、恵理子さんは「夏の着物が着られる時期だから」と、着物を着るためにお出かけされていましたね。
着物は暑くて着られないけれど浴衣なら…という方もいらっしゃると思います。
ということで今回は浴衣と着物それぞれに、夏のお召し物の良さを考えてみたいと思います。

お先に申し上げておきたいのはTPO、つまり着ていく場面にふさわしいお召し物というものはあれど、優劣はないということです。どのようなものにも・ことにも・人にも一長一短存在するのと同じです。
浴衣だから良い、着物だから良いというよりは、ご自身のお好みやご用途に合った夏のお召し物の愉しみ方を見つけていただけましたら幸いです。

 

 

浴衣のおすすめポイント~
浴衣の一番の良さは、「気軽に着られる」というところでしょう。この言葉は着付け、価格、お手入れなど多角的な面から見ても当てはまります。
それぞれの視点からご紹介いたします。

〈着つけのしやすさ〉
綿コーマ白地に青色ぼかし朝顔の浴衣、ミントグリーンのグラデーションの小袋帯

浴衣は着物に比べて、着つけに必要なものが少ないです。
肌着の代わりに浴衣スリップをお召しいただきましたら長襦袢は必要ありません。
帯も八寸や九寸の帯でお太鼓結びをされる場合もありますが、四寸帯を使った気軽な結び方もバッチリ合うのが浴衣だと思います。
お着物を楽しみたいけれど着つけに不安がある…という方にも、和装の第一歩として浴衣はおすすめしております。

 

〈お求めいただきやすさ〉
着つけに必要なものが少ないということは、リーズナブルにお求めいただけるということでもあります。これからお着物を始めたい方に浴衣をおすすめしたいもうひとつの理由です。

慣れてきたら次は少し上等な浴衣に長襦袢を下に着て、足袋と草履を履いてちょっとしたお食事に…と、お着物と同じような着方をすることもできます。そのような場合でもお着物を一式そろえるよりも気軽にお楽しみいただくことができるのではないでしょうか。

白地に緑で文字が書かれた絹紅梅、縦絽グリーン地垣柄の袋なごや帯、茶色小地谷縮無地の帯揚げと茶色と白ぼかしの夏帯締め

 

〈お手入れのしやすさ〉
絹を使用している絹紅梅などもありますが、浴衣のほとんどの種類は綿のものですので、ご自宅でお洗濯していただけます
夏場で汗をかきやすいシーズンだからこそ、気軽にお洗濯できるのは安心ですね。

 

 

~着物のおすすめポイント~
明石縮(薄紫に縦の絣が入った柄)と夏の袋なごや帯(焦げ茶色、夕日が浦)のコーディネート。グレー地にカラフルな丸の帯揚げと紺地に白のレース組の帯締めを合わせています。

〈着姿の美しさ〉
絹特有の光沢やしなやかさ。ご自身のお身体になじむお着物は外から見ても美しく映りますし、着心地も良いものだと言えます。
また、夏のお着物のほとんどは絽や紗などの透け感のある生地。見た目にも涼しく見えるのがひとつ、長襦袢などとの「色の重なり」をお楽しみいただけるという良さもございます。
夏のお着物は淡く涼やかなお色のものが多くございます。絹は綿や麻に比べても染料が定着しやすいので、その繊細で美しい色合いは絹のお着物だからこそ身に纏えるのではないでしょうか。

 

〈帯合わせの幅広さ〉
種類にもよりますが、合わせる帯次第でカジュアルな雰囲気に寄せたりフォーマルな雰囲気に寄せたり、お着物は幅広い場面でお召しいただくことができます。

夏の絽の小紋(紺地、雪輪に花)と絽綴の袋なごや帯(白地に紫の甲冑柄)の準フォーマルコーディネート。水色に銀糸のはいった帯締めと白地に水色と紫の七宝の帯揚げを合わせています。
例えばこちらのコーディネート。紺地の飛び柄小紋に、夏帯の定番「絽綴」の帯を合わせてみました。
小紋は普段着としてお召しいただけるお着物ですが、準フォーマルなコーディネートも叶えます。
「夏の着物をあまり持っていなくて…」というお声を耳にすることもありますので、様々な場面でお召しいただけるお着物で「一着持っていると安心」と思っていただけましたら幸いにございます。

 

洗えるお着物という選択肢も広がるなかで、ゑり善が大切にしているのは「絹が持つ特長」。
着心地の良さはもちろんのこと、古来より日本人が大切にしていた「周りからも楽しんでいただけるように」、夏の場合は「涼しく見えるように」という考え方。それを実現できるのが絹なのではないかと思います。

お手入れに出していただく必要はございますが、世代を超えてもお召しいただけるのが絹のお着物です。だからこそ大切に着たいと思っていただけましたら嬉しく思います。
お召しになった後にきものハンガーに吊るしていただきますとしわも多少伸びます。ご着用の頻度や汗の量にもよりますが、お手入れは7,8月の2カ月間お召しいただいた後でも構いません。

 

 

お着物や浴衣の形は、袖などに風が通りやすいので気温の変化を肌で感じやすいようです。
最古の勅撰和歌集、古今和歌集にも次の和歌が収録されています。

秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

「秋が来たと目にははっきりと見えないけれど、風の音ではっと気づいた」という意味のこの和歌。秋は風から訪れると言っています。
夜は少し涼しいな、秋の気配がするな、そんな自然のささいな変化に気づかせてくれるのがお着物なのかもしれませんね。

熱中症対策を忘れずに、塩分水分を摂りながら、今年の夏も楽しく過ごしてまいりましょう。

本店営業・久保田

 

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」代表取締役社長として働く「亀井彬」と京都で営業として働く「久保田真帆」 二人が日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできましたら幸いです。