きものを愉しむ

2026/10/25

和裁士に学ぶ「半衿の取り付け方」のポイント

いつもゑり善のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。

本店・営業の筒井でございます。
10月に入り、袷の着物の季節がやってまいりましたね。私も仕舞っておりました袷の着物を久しぶりに出し、先日早速お出かけをしてまいりました。

着物を心地よく着続けるにあたって、半衿の取り替えやアイロンがけなど、ご家庭でのお手入れも大切です。
しかし、どう扱ったら良いのか分からずお悩み方も多いのではないでしょうか。

そんな小さな疑問を解決すべく、9月に開催いたしました「双美展」にて“これが知りたい!仕立屋さんの特別講座”を行いました。(※京都本店にて開講)

和裁士の資格を持ち、仕立て屋としての経験も豊富なゑり善社員を講師に、着物に関するお役立ち術をワークショップ形式でお客様に体験していただきました。
 
 開催講座内容
・半衿取り付け
・帯の浮糸直し
・しつけ糸の楽々外し方
・アイロン掛け
・仕立ての技術の実演(男仕立て)

どれも自宅で気軽にしたいけれど、プロからの意見は聞いたことがない、そんな内容かと思います。
今回は、その中でも特に人気のございました「半衿取り付け」講座に、お客様と一緒に参加し勉強してまいりました。

本講座にて、プロから直接学んだ半衿取り付けのポイントを3つご紹介いたします。

仕立講座の様子

 

普段自分で半衿取り付けをしているけれどなんだかしっくり来なかったり、時間をかけて縫ったものの衿が波打ってしまい綺麗につけることを断念してしまったことはありませんか。

私は以前半衿取り付けをした際に衿のたるみが気になり、満足のいかないそんな経験をしたことがあります。

着物をお召しになるにあたって必要不可欠な半衿。長襦袢にピシッと縫い付けられていると気持ちが良くなります。コツを掴んで気軽に綺麗に半衿を取り付けられるようになりたいものです。

 

~ポイント1 : 衿端をずらす~

半衿は、首に添い曲線を描くような形をしているため、外周と内周で長さの差が生まれます。衿のシワやたるみは、この差の処理がうまくできていないため発生するのです。

この差を減らすために、内側の衿端を、外側よりも2~3分(約1㎝)ほど衿先側(裾の方向)にずらしまち針で固定します。これにより、内側と外側の長さの釣り合いをとることができます。
( ※ずらす長さは塩瀬の半衿の場合の目安です。絹や化繊、袷物や夏物と生地の伸縮度合いによって調整します。)
衿端をずらす=つまりスタート地点をずらすことで内側の衿のたるみを解消することができます。

 

~ポイント2 : かけ針を使用し、張りながら縫う ~

かけ針とは、生地端を挟むことのできる道具で、作業台などに固定し使用します。
長襦袢と衿を浮かせた状態で縫うとどうしてもずれが生まれやすいのですが、かけ針を使用することにより生地を張った状態で縫い進めることができます。
半衿取り付けは、いかに必要な方向にテンションをかけ、縫うことができるかが鍵となります。

かけ針をお持ちでない方は、アイロン台とまち針で代用することができます。
衿端あたりをアイロン台に乗せ、その上からまち針を刺し固定します。このまち針が、かけ針の代わりとなり生地端を固定する支点の役割となります。

かけ針を使用し生地端をつまんだ様子

 

~ポイント3 : 衿芯を入れたあとの、ひと工夫 ~

綺麗に半衿を縫いつける事はできたはずなのに、半衿の中で衿芯が動いてしまい角がピシッとしない、そんな経験はありませんか。

これは半衿と衿芯の幅の違いにより少しの空間が生まれることが原因と考えられます。
解決方法として、半衿の中心から7寸(約27㎝)のあたりに衿芯を抑えるようにひと針入れます。

このひと針のひと工夫を行うと衿芯が半衿の端に沿うようになり、よりシュッとしたシルエットとなります。
半衿をすっきりとさせたい、そんな方にはぜひ挑戦していただきたいポイントです。

↑画像の中心下あたり。半衿の天から27㎝ほどの場所にひと針。

 

〈 衿に関する豆知識 〉

長襦袢の衿の多くは「バチ衿」と呼ばれる形になっています。
この名前の由来をご存知でしょうか。
長襦袢の衿は一定の幅ではなく背中心付近は1寸4分(約5㎝)ほど、衿先付近は1寸8分~2寸(約7㎝)ほどの幅になっております。 そのため、よく見ると中心から少しずつ広がっていくような形をしているのです。

この広がる形が三味線を弾くときの「撥バチ」に似ていることで「バチ衿」と呼ばれるようになったそうです。

ちなみに女性の着物は「広衿」、男性ものや子供ものなどは「棒衿」と、衿にもいくつか種類がありそれぞれ形に沿った名前がついています。

 

~ 講座を終えて ~

私は家庭科の授業は得意だったものの、それ以来お裁縫をする機会がほとんどないこともあり当日はかなり苦戦してしまいました。
半衿の取り付けは、平らなものをただまっすぐ縫うのではなく、平らな半衿で曲線という立体をつくるため、正直慣れも必要な細かい作業だと体感いたしました。
ですが、コツを押さえるだけでうんとやり易くなりました。

今回の講座でプロの手捌きを実際に見て、そして手を動かしながら鍵となる大事なポイントを知れたことはとても大きな一歩となったと感じます。

また、これまでは半衿を取り替えて新しくまた縫い付け直すという作業自体が手間であるとマイナスなイメージを感じておりましたが、この講座を終え、このひと手間が着物の魅力の一つなのではないかと気づかされました。
自分で半衿取り付けを行うことで、生地に触れ、状態を確認することができます。そして仕立ての大変さや有難さも感じることができます。この手間は、不要な手間ではなく、必要で大切な手間なのではないでしょうか。

“これが知りたい!仕立屋さんの特別講座” により仕立てのプロの技に触れるという貴重な経験と、今後の着物生活に役立つポイントを知れた、そんな気がいたします。

 

最後になりましたが、双美展にて開催いたしました本講座は満席御礼にて無事に終了いたしました。
満席につきご参加が叶わなかった皆さまも含め、本イベントに関心を寄せていただいたすべての皆さまに、心より御礼申し上げます。

次回の開催につきましては、来春に向けて検討を進めております。
詳細が決まり次第、新着情報や展示会情報にてお知らせいたします。
 
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

本店営業・筒井

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」代表取締役社長として働く「亀井彬」と京都で営業として働く「久保田真帆」 二人が日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできましたら幸いです。