きものを愉しむ

2024/11/01

“色留袖”を掘り下げる

店頭に来年の干支小物が並びだすと、今年もあと2か月か…としみじみ感じるようになりました。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

さて、前回のブログでは黒留袖についてご紹介いたしました。
通常“留袖”と言えば黒留袖のことをさすのですが、黒留袖とは色留袖と区別するために呼ばれる場合が多いです。

色留袖はどんな場面で着たらいいの?というお声をよく耳にします。
一番に思いつくのは叙勲や結婚式などでしょうか。
そうはいってもそのような機会がなかなかなく、お家にある色留袖を着たくても着られない…といった方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんね。

お着物の中でもハードルを感じられてる方が多いように見受けられる色留袖。
実際は紋の入れ方などによって様々なご用途でお召しになることができるため、もっと身近に感じていただける種類のお着物なのです。

今回は紋の数ごとに場面を想定し、コーディネートとともにご着用シーンを紹介していきたいと思います。

 

色留袖とは~

黒留袖と同じく裾に模様のあるお着物です。
黒留袖との違いは地色が豊富であることと、黒留袖は必ず五ツ紋を入れるのに対して色留袖は紋を入れる数に自由が利くことです。

お顔まわりは無地のすっきりとしたお着物となるため、黒留袖に対して色華やかな、けれど落ち着いた雰囲気でお召しになることができます。

 

~五ツ紋コーディネートのすゝめ~

五ツ紋を入れた色留袖は、黒留袖と同格の第一礼装です。
色留袖は比翼の有無によっても格の高さが変わってきますが、五ツ紋の場合は通常黒留袖と同じく比翼をつけてお仕立ていたします。

色留袖と袋帯

色華やかな松に宝尽くしのおめでたい文様が散りばめられたお着物。
五ツ紋の色留袖は黒留袖と同じく金や銀の格調高い柄の帯、白地に金糸や銀糸の入った小物を合わせます。

叙勲などの宮中の行事はもっとも格式高く、思い出にも残る出来事となりますので五ツ紋をおすすめさせていただいております。
結婚式では一般に既婚のご親族は黒留袖を着用しますが、結婚披露宴などで色留袖をお召しになるとお着物の色で会場に華やかさが添えられます。

〈着ていく場面〉
・叙勲
・結婚披露宴

 

~三ツ紋コーディネートのすゝめ~

ゑり善では色留袖に、五ツ紋よりも幅広くお召しになれる三ツ紋をおすすめすることも多いです。
訪問着はお袖にも柄があるため一ツ紋が主流ですし、黒留袖は必ず五ツ紋を入れます。
三ツ紋のお着物と言えば色留袖、と思われた方もいらっしゃるでしょうか。

三ツ紋の色留袖も比翼仕立てが一般的ですが、比翼は付けずにお仕立てし、必要な場面に応じて白の伊達衿を重ねる方もいらっしゃいます。

色留袖と袋帯

吉祥文様が描かれる色留袖。鶴が格調高さを感じさせますが朱色の鮮やかさが目に入るお着物。
柔らかくすっきりとした印象でお召しいただけます。
三ツ紋の場合は金銀を基調としつつも色味の入った帯と合わせると上品にお召しいただけます。

三ツ紋の場合でも結婚披露宴にお召しいただけますし、初釜などいつもより格式の高いお茶会、お祝いのお席などにもおすすめいたします。

〈着ていく場面〉
・結婚披露宴
・初釜
・お祝い事

 

~一ツ紋コーディネートのすゝめ~

色留袖は一ツ紋を入れて訪問着感覚でお召しいただくこともできます。
金銀が少なく、あっさりとした柄ゆきのお着物は特に一ツ紋の装いにおすすめです。

色留袖と袋帯

Instagramにてご紹介いたしました色留袖でコーディネートを考えてみました。
色味が良いのではないかと、思い切って洋風の菱華文の帯をのせてみます。
辻ヶ花の柔らかい雰囲気はおしゃれな帯にも合いますね。
五ツ紋や三ツ紋に合う古典的でかっちりとしたコーディネートだけでなく、一ツ紋の色留袖なら少しモダンなコーディネートもできるのです。

観劇の中でも千秋楽やこけら落とし公演、パーティーの中でも周年記念などすこし華やかめの公演やお式でお召しになるのもよいと思います。

〈着ていく場面〉
・華やかめの公演やパーティー

 

【おまけコラム ご家族行事と色留袖】

先ほど結婚式で既婚のご親族は黒留袖を着用するとお伝えしました。けれど新郎新婦さんが格式張らないお席を望むとき、またお若い既婚女性など、ご両親以外のご親戚は色留袖や訪問着をお召しになることもあるようです。
どちらをお召しになるか迷われた場合、結婚式などご親戚が一堂に会するような場面では、周りの方とどのようなお着物をお召しになるかご相談のうえでお決めになることをおすすめいたします。

また、色留袖をお召しになる場面がなかなかないのでと、七五三でお召しになった方もいらっしゃるようです。
七五三では訪問着や付下げをお召しになるお母様やお婆様が多くいらっしゃいます。しかしご家族行事、身内の事ですのでタンスにお着物を眠らせておくよりは、格にこだわりすぎずにお召しになりたいお着物を選ぶ、というのもひとつかもしれません。

 

以上色留袖についてご紹介いたしました。
少しでも疑問解消の手助けやご参考になっておりましたら幸いです。

意外と多くの場面でお召しになることができる色留袖。
少し見てみようかしら…と思ってくださった方におすすめしたい催し物がございます。

お客様への日頃の感謝を込めて先日名古屋店にて開催いたしましたセール、蔵ざらえ。
銀座店京都本店へと続いていきます。

今回の特別企画の一つ、「留袖・色留袖」大特価はなんと6年ぶりの特別ご奉仕になります。
黒留袖もなかなか着る場面がなく、レンタルをご検討される方も多いと聞きます。
たとえ数回の機会でも前回のブログでご紹介させていただいた、“黒”にこだわったお着物にご自身の紋を入れてお召しになる、その良さもあるのではないかと思います。

第一礼装のお着物はどんな雰囲気のものがあるのかな、ほんの興味で構いません。
この機会にぜひ一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。

本店営業・久保田真帆

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」の代表取締役社長として働く「亀井彬」です。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできればと思い、日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。