きものを愉しむ

2024/05/31

綺麗なきものをいつまでも~きものをたたむ際のポイント~

初夏とは思えない暑さが続きます。
いつもご覧いただき誠にありがとうございます。
本店・営業の久保田でございます。

早いもので6月。衣替えの季節ですね。
お着物も袷の着物から、6月には単衣の着物にかわります。
呉服屋としては「単衣の着物は6月から」という基本的な情報をお伝えしたうえで…
この暑さですので、特に普段着としてお召しいただく際には気候に合わせた臨機応変な衣替えをお伝えさせていただいております。

衣替えを行ったら袷のお着物とは10月までしばしのお別れです。

 

さて、お着物をお召しになってから箪笥にしまうまでに、こんなお悩みを持ったことはないでしょうか。

着物が上手に畳めない…
しまい方があっているのかわからない…

今回はお着物をお召しになった後の流れの中で、お着物を綺麗な状態で保管していただくためにここはチェックしていただきたい!というポイントをご紹介していきます。
少しでも参考になりましたら幸いです。

 

~着物を干す~

お着物をお召しになった後は、簡単なシワを伸ばすために着物を着物ハンガーなどに一日程度かけておきます。
ついでに状態を確認しておきましょう。


写真1

上前、裾、衿、袖口は特に汚れやすい部分ですので、念入りにチェックします。(写真1)
また、雨の中お着物をお召しになった場合は、あらぬところに泥ハネなどがついている場合もありますのでさらなる注意が必要です。
シミや汚れが見つかった場合は早めにお手入れに出しましょう。

どれくらいの頻度でお手入れに出したらいいの?といったご質問を承ることもあります。
しばらく着用予定のないものはお召しになった後に、まだ着る予定のあるものはワンシーズンに一回のお手入れをおすすめしております。

衣替えの時期に合わせてお手入れに出すようにすると、長期間しまう前に綺麗な状態で保管できますし、うっかりお手入れのタイミングを逃してしまった、といったことも防ぎやすいと思います。
ちょうど今の時期に袷のお着物をお手入れしていただくとよいでしょう。

 

~着物をたたむ~

さて、簡単なしわ伸ばしと状態のチェックを終えたあとは、着物をたたんでいきます。

着物という独特な形容をしたお召し物、どのようにたたんでいったらよいのだろう…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、いざたたみ慣れてみると着物はコンパクトにたたむことができる優れものに思えます。
左右の衿や袖といった、同じところを合わせていくと綺麗にたたむことができますし、着物の裁ち方は四角形を基本としており無駄がないので、かさばるところもほとんど出ません。

「着物のたたみ方」を検索するとわかりやすく解説されているところがあるかと存じますので今回は割愛させていただき、呉服屋目線から、ここに気を付けたら着物を綺麗にたためる!というポイントをご紹介していきます。

 

〈手でしっかりシワをのばしながらたたむ〉

着物を綺麗にたたんで保管するために一番避けたいのは「折れジワがついてしまうこと」です。
折れジワがついたまま長期間置いてしまうと、いざ次にお召しになるときにシワがついていて焦ってしまう…なんてことになりかねません。


写真2-1

着物は基本左右の脇線、衽線といった同じ線同士を重ねていきますが、簡単に言えばおそるおそるたたむよりは勢いよく生地を持ってきたほうが、生地同士がこすれずシワになりにくいです。(写真2-1)


写真2-2

また、重ねた部分の端と端をもって少し左右(手が離れる方向)に引っ張ると生地もピッと伸びます。(写真2-2)


写真3

余談ですが、私たち呉服屋は「半畳でもきものをたためるように」教わります。
丈の長い着物はたたむのにも場所の確保が必要なイメージがありますが、身頃をたたんだ後軽く屏風のようにたたんでおいてから衿側をたたむのにとりかかるとスペース削減できるのです。(写真3)

 

〈衿の畳み方〉

こんなお声もよくいただきます。衿のたたみ方がよくわからない、と。
簡単にですがご説明いたします。


写真4-1

まず左右の衿先から合わせていきます。(写真4-1)
そうすると山の部分でどうしたらよいのか迷う方もいらっしゃると思います。
シンプルに説明すると、ここも「折り目に沿いつつ同じところ同士を合わせていけばよい」のです。


写真4-2


写真4-3


写真4-4


写真4-5

衿の一番先の部分、そこから左右に少し離れた部分に折れ線がついていると思います。
先の部分は谷折りに、左右の線のところで山折りにするともたつくことなく衿を綺麗にたためます。(写真4-2~4-5)

 

〈見えないところに注意〉


写真5-1

身頃→衿→袖と綺麗にたためた…と思っても油断してはいけません。
例えば写真5-1の場合、一見綺麗にたためているように見えますが…


写真5-2

下に入っている袖を見てみると折れてしまっていますね。(写真5-2)
このような部分に気づかないまましまってしまうと折れジワになり慌てることになります。ご注意くださいませ。


写真5-3

結構この部分、気づかないうちに折れてしまっていることが多いので、袖をたたんだ際も袖の端同士をもって軽く引っ張ると、変に折れていないかの確認もできますしきちんと生地をのばせます。(写真5-3)

一通りお着物をたためたあとは、もたついている部分がないか、折れてはいけないところで折れてしまっている部分がないか、もう一度チェックしましょう。

 

〈身頃を袖側に重ねる〉

着物をたたむ工程の最終部分、身頃を半分に折り、袖側と重ねる際のポイントです。
この身頃を持ってくるところ、長さがあるので崩れやすい…と考える方も多いのではないでしょうか。

まずどこから折ったらよいのか、という点ですが、衿が変に折れないように、衿の先からがおすすめです。
これは着物の長さにもよりますのであくまで目安程度に考えていただけましたら幸いです。


写真6-1

身頃を持ってくる際は左手で裾をもち、右手は折り目の部分に添えるとよいです。(写真6-1)


写真6-2


写真6-3

右手はそのままに身頃を袖に重ね、最後に右手をスッと引きます。(写真6-2,6-3)
このようにすることで折り目の部分ももたつくことなくたたむことができます。


写真7-1


写真7-2


写真7-3

手が使いにくければ長めの物差しを使う方法もございます。(写真7-1~7-3)

 

以上、着物を綺麗にたたむことができました!

ゑり善に入社し3年目に突入した私ですが、入社研修でたたみ方を習ってから今日まで、何回も着物をたたんでおります。
慣れてしまったことをあらためて言葉にして説明する、となるとなかなか難しさを感じるところがありますね。
ブログも書かせていただくようになってから1年以上が経ちましたが、まだまだ精進してまいります。

不明確なところ、着物のたたみ方以外にも悩まれていることがございましたらどうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。
店舗でもお教えいたします。実物をご覧いただきながらお話させていただいたほうが分かりやすいこともあるかもしれませんので、どうぞご遠慮なくお立ち寄りくださいませ。
今後とも皆様のお力になれましたら幸いです。

 

【おまけコラム~着物に入れられている紙について~】

新しく仕立てたりお手入れに出したりしたお着物。
お手元に届く際に紙が入れられていることが大半ですよね。
なぜ入っているのだろうか、抜いたほうがいいの?といった疑問を抱いたことのある方も少なくないと思います。
紙に関するちょっとした小話をいたします。

 

まずなぜ紙が入っているのかという点ですが、お着物がシワになりにくいようにという意味がございます。
移動中お着物が偏ったりシワがついてしまったりしては一大事です。
細心の注意を払って綺麗な状態でお届けさせていただきます。

 

紙を抜いたほうがいいのかどうか、という点につきましてはメリットデメリットがありますのでどちらも知っていただいたうえでご判断いただけますと幸いです。

メリットにつきましては紙が入れられている理由である、しわになりにくい、というのが最大のポイントです。
また、雲龍紙(うんりゅうし)と呼ばれる薄紙は、刺繍や金彩の部分、紋の位置に挟んでおります。
お着物の他の部分に金彩や刺繍の跡がうつらないよう、お着物を保護します。

デメリットにつきましては、紙は水分を吸いやすいという点がございます。
そのためカビになりやすいので特に湿気の多い季節は注意が必要です。

新しいお着物、お手入れして綺麗になったばかりのお着物には気持ちよく袖を通したいですよね。
喜んでお召しいただきたい、というのはお着物を仕立てる者、預かる者、お手入れする者とて同じです。
ご着用後お着物をしまう際には紙を入れ直す必要はございませんが、関わる者たちが皆お客様のお着物を大切に思っていることが少しでも伝わりましたら幸いです。

本店営業・久保田真帆

京都・銀座・名古屋にて呉服の専門店として商いをする「京ごふくゑり善」の代表取締役社長として働く「亀井彬」です。
日本が世界に誇るべき文化である着物の奥深い世界を少しでも多くの方にお伝えできればと思い、日々の仕事を通して感じることを綴っていきます。