型絵染作家 澤田 麻衣子さん Sawada Maiko
澤田さんの作品は着て行きたくなる、着る場所を作ってくれる帯だと思っています。そのあたりは意識されていたりしますか?
そうですね。着てワクワクするような、気持ちが上がるようなものをお渡ししたいなという想いがあるので、いろんなシーンで着ていただけるというのはありがたいことです。
『糸くりの詩(※2025年2月7日(金)~9日(日)京都本店にて開催)』では澤田さん特集の案内状を見てご来店くださった方も多かったです。
ありがたいですね。
作品の中にワクワク感が上手く凝縮されているイメージがあるのですが、それは澤田さんがお着物をお好きだというのも大きいと思うんですよね。
やっぱり自分でも結びたくなるような帯のモチーフを考えます。四季折々の美しい景色やそのときにしか見られない風景が日本のすばらしさなので、染めるときにそういう要素を取り入れたりしますね。着物はちょっと季節を先取りするので、「この季節になったらこの帯を締めたいな」って思えるものを作れたらいいなと思っています。
今回ゑり善用に作っていただいた雪花柄の帯とかですね。この雪花の帯をお求めいただいたお客様が、さっそく廣田紬さんのところで開催された会(『令和のきもののしごと展』)で締めてくださって。
澤田さんのおっしゃるように、季節のものをうまく取り入れているから、その季節が来たら締めたくなるんでしょうね。
なかなかね、季節を限定すると締める期間が短くなってしまうというのもあるんですけど…それも考えながら、その季節にしか締められないというのもお洒落のひとつだと思います。季節感も、着られる方がそれぞれ着物や小物の取り合わせを楽しむためのアイテムの一つになったらいいなと思っています。
『糸くりの詩』にお越しいただいた感想などを伺えたらと思います。
お着物姿でお店に来てくださった方も多く、私もすごく嬉しかったです。帯に新しい命を吹き込んでもらえたなという感じがあります。皆さんのそれぞれのコーディネートを見せていただけるのは楽しみですね。「ゑり善さんのコーディネートを見せていただきたいです」と事前にお願いをしていたので、そちらの陳列も楽しみながら過ごさせていただきました。紬の反物などを拝見して、こういう組み合わせもあるんだと次の制作の意欲にもなりました。
展示会『糸くりの詩』は普段よりもおしゃれものが多く揃うタイミングでした。澤田さんの帯と織りの着物を合わせることにより、やわらかもの(染めの着物)と合わせるのとはまた違った、カジュアルな着物でのお出かけを想像できるような展示になったかと思います。
“組み合わせる”というのは小売店の大事な役割であると感じさせられました。やっぱりおしゃれものの帯の楽しさは、こういうところにみられるのだなと感じています。
澤田さんの帯をご紹介させていただいたとき、第一印象で「きれい」「かわいい」という反応を多くのお客様からいただけました。澤田さんの帯の色彩は、すごく元気をもらえるような色合いで私自身も好きです。明るさを自分の中にもらえる、そんな魅力があるのだと思います。お客様がどう感じておられるかを明確に言葉にするのは難しいですが、じっと帯を見ておられる姿から、惹かれる何かがある、魅力あふれる作品なんだなと感じていました。
型絵染とか紅型には強い印象があって、その色に合わせてコーディネートしていくことが多いのですが、澤田さんの帯はスーッとその人に入り込んでいくような色使いですよね。顔料とか染料の話になるのかもしれないですけど、そのあたりの配色の妙が素晴らしいなと。
完成させないというのは、どのような心遣いがいるものなのでしょうか。完璧を作っていくほうが簡単そうというか…
そう言われると、逆に完璧を目指したところで完璧なものは作れないっていうのはあります。
制作は足し算じゃなくて引き算の方が難しいんですよね。これも足してあれも足して…と何色も入れ込みたいときもあるんですけれども、「この色が無くても、着た時に帯〆で入れてもらう方が楽しいんじゃないか」という意識はしますね。自分も着物を着るのでその感覚があるのかなという気がします。
着る側としてはどうですか?
店の商品を見るときに販売側として着物と帯の組み合わせを考えることはよくありますが、澤田さんの帯を目にしたときは「自分のあの着物に合うな」と直感しました。客観的に商品として見るのではなくて自分のこととしてすっと懐に入ってくるという感覚は、引き算で計算されていて、着ることで完成されるからなのかなとお話を聞いていて思いました。コーディネートを考えるのが楽しくてワクワクした気持ちになります。
うれしいです。
作品の良さを伝えるのもそうなんですが、似合う人のところに持っていくというのが私たち小売店の役目だと思っています。澤田さんの言葉を借りると、その帯は最初から行き先が決まっていて…
縁が先に繋がっている、お客様と帯が繋がっている、という。
私たちは逆に邪魔せずにその人のところに持っていけたら一番いいなと思っています。「あくまでも商品とお客様のご縁をつないでいるだけなんです」と話している先輩がいて。この商品はこの人が着てくれたらいいなという想像を掻き立てられるのが、ワクワクする商品なのでしょうね。
営業はお客様にお見せする・ご紹介するというのが仕事であると考えていますが、お客様と縁が繋がっているものは考えようとしなくてもパッと「あ、これはあの方に見せたいな」と思い浮かぶ、そういうときがあります。
そこは逆にご苦労のないようにしてくださいね。すっとお客様のところに渡るのが、一番みんなよかったねとなるところですね。
飽きがこないっていうのも大事なことですよね。盛りすぎると飽きがくる…。
特に型染めは具体的なモチーフが多いので覚えられるんですよね、周りの方に。そういう点では、年に1回の楽しみや季節の楽しみに取っておいてもらえたら。また今年もこの帯を締められたという楽しい気持ちになってもらえたらうれしいです。
着物と帯は組み合わせることにより表情が付くので、帯はそのままで着物を別のものにすると雰囲気も変えられるのが良いところです。それが飽きずに着られる要素かもしれないですね。
そうですね。確かにそうですね。
澤田さんのワインの帯が支店で決まったんです。ご遠方からお越しの方が飛行機の30分くらい前にパッと見てパッと決められて、持って帰ります!と。ビビビッとこられたのでしょうね。他の商品も見られましたが、やっぱりこれだと。その方からしたら飽きがこない帯なのでしょう。