おはようございます。ゑり善の亀井彬です。
いつもブログをご覧いただきまして、誠にありがとうございます。
昨日の京都は何といっても寒い一日でした。
朝方の気温が12度ほど。それからは気温が上がらず10度を下回るような一日。
厚手のコートやマフラーをされている方が目立ちました。
12月を直前にして、いよいよ冬の到来を感じるようになってまいりました。
京都に年末が近づいてくると、楽しみになるのは南座の「吉例顔見世興行」ではないでしょうか。
昨年、南座が改装され、今年は令和になって初めての公演となります。
公演に先駆けて、26日から「まねき」も上がり、南座の前を通ると自然と気持ちが高まります。
皆様は「吉例顔見世興行」はご覧になられたことはございますでしょうか。
恥ずかしい話ではあるのですが、私はこの仕事をするまで、歌舞伎をきちんと見たことがありませんでした。
5年前のある時に「京都にすんでいるなら、顔見世にはいかなきゃ」とお客様から熱烈なお勧めを受けたのがきっかけです。
「かぶき踊り」が出雲の阿国によって京都で始められたとされるのが1603年。
すでに400年以上の歴史がありますが、時代が変わっても日本人の心に響くストーリーの大筋は変わらないのが不思議です。
まだまだ楽しみ方も勉強中の身ですので、顔見世興行では、いつもイヤホンガイドを借りています。
話のストーリーやその場面までの背景などを知ることができることに加えて、見るだけではわからない「衣装があらわしている意味」を知ることができることがイヤホンガイドの魅力の一つです。
役者さんが来ている衣装には、どのような意味が込められているのか、また見ている人も、役者の衣装から何を感じ取っているのか。
着物に携わるものとして、見た目の美しさだけでない、衣装の持つ役割を教えてもらえる時間になっております。
南座の吉例顔見世興行といえば、「やはりお着物姿で!」というお客様は今も多いです。
江戸時代、劇場と役者は、一年ごとに契約を結んでおり、顔見世興行は翌年一年の一座の顔ぶれを披露する最も重要な興行とされていました。そのため観客の側も、「その日の為にお着物を新調して、役者さんへの敬意を示していた」というお話を聞いたことがあります。
普段なかなか数多く作ることはできないけれど、1年の締めくくりの顔見世興行には、一帳羅でお出掛けを!というお気持ちがあったのだと思います。
「顔見世興行にはできれば『やわらかもの』のお着物で行きます」とおっしゃるお客様が多いのも、こうしたことが由来なのだと実感します。
※ちなみに、「やわらかもの」とは、白生地に後染めのお着物のことを指します。訪問着や付下、色無地、小紋など。一般的に友禅といわれるお着物は「やわらかもの」のお着物の代表です。「たれもの」とおっしゃる方もおられます。
一方で「かたもの」といわれるのが、先に糸を染めてから織り上げる先染めのお着物のこと。大島紬や結城紬など各地の産地の紬が「かたもの」の代表です。
このような背景から、お客様からも顔見世興行で着る着物はどのようなものが良いの?とご質問をいただくと、やはり「やわらかもの」のお着物をお勧めしております。
とはいえ、今では織り物の紬をお召しのお方も多いですし、あくまでも観劇はおしゃれ着としての楽しみでもありますので、お客様がお召しになりたいお着物をお楽しみになられるのが良いのではないかというのが、わたくしの個人的な感想です。
是非、今年の顔見世興行には皆様もお着物姿でお出掛けくださいませ!
いよいよ明日から始まります。今年はどのような公演になるのか、待ち遠しく思います。
南座からは歩いて5分ほどのところに、弊社もございますので、是非顔見世興行の前や後には、弊社にもお立ち寄りくださいませ。
お客様に文化の入り口まで連れて行っていただける、この仕事のありがたさを思いながら、本日もお着物と向き合います。
長くなりましたが、最後までお読みいただきましてありがとうございます。